レグルス 〜わたしの1等星〜
□10 レグルス
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今日も帰宅は終電まぎわ。
雑誌の締切に追われるなまえには、入稿後のこのちょっとした達成感がたまらなく気持ちいい。
深夜の住宅街を、足音を響かせないように歩くも、辺りに人影はなかった。
あれから1年、なまえは東京で変わらぬ日々を送っている。
東堂尽八との関係は、結局、なまえ自身の意志でなんでもなかったことにした。友達にも話していない。
だって、若いコとの、それも有名選手との仮初めの付き合いなんて、スマートにこなせるガラじゃない。
「東堂くん、元気にしてるかな?」
時折思い出すのは、彼のポジィティブな笑顔や涙だ。どんな表情をしていてもキラキラと輝きを放つ。
でも、東京な夏の空では、しし座の1等星は目を凝らしても見つからなくて、都会の明かりをうらめしく思う。
なまえは来週、またヨーロッパに取材で行く。今度はたった3日間の滞在だ。
もし彼と再会できたら、記者として、一ファンとしてエールを贈ろうと思う。「好き」だと言わずに済むように。