レグルス 〜わたしの1等星〜

□5 再会
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「うわぁぁぁ、寝坊した。このオレとしたことが!遅刻してしまう!」


久々の我が家で、安心しきってすっかり熟睡していた尽八は、目が覚めて時計を見た途端、絶叫して飛び上がった。


「なんたる不覚!」


慌てて着替え、寝癖のついた髮を水でなでつけカチューシャで押さえ込むと、尽八は家を飛び出て自転車にまたがった。


「いってきます!」


家族に聞こえたかどうか、確認する余裕もない。今日は箱根学園の仲間達と久しぶりに再会する日なのだ。
それに後輩達を激励しに行くのに、東堂尽八が遅刻するなどあってはならない!


尽八は駅前商店街の道を全力で駆け抜け、箱根学園を目指した。



部活で毎日毎日、何度も何度も通った馴染みのあるハコガクへと続く道、卒業した今となってみれば、さまざまな想い出が甦ってくる。

インターハイメンバーに選ばれてからの練習はことのほかキツかったっけ。

そうだ、今ではあの真波山岳が3年生で、自転車競技部の主将だという。あの遅刻魔だった真波が、どんな顔をして大勢の部員達をまとめているのだろう?間もなく目にする後輩の姿を想像し、尽八は顔をほころばせた。


仲間達は現在大学生。皆、それぞれの自転車部でロードレースに励んでいるらしい。大学生とは勉学に加え、遊びやバイトにも励むものらしいが、どんな生活を送っているのだろう?

高校卒業と同時にプロになるためヨーロッパに渡った尽八にとっては、大学生活は想像しかできない。

自ら選んだ進路に後悔などないが、尽八は大学生活が少しだけ羨ましくもあった。


箱根学園の正門が近くなると、尽八は息を整えるために速度を落とした。

ヨーロッパでプロとして活動中の自分は、後輩の部員達にとって憧れの存在に違いない。彼らのためにカッコいい姿を見せてやらねばなるまい。



正門まで来ると、懐かしい母校に敬意を払って、尽八は自転車を降りて押して歩いた。

ヘルメットを外し、髪の乱れを整える。ダラダラとひたいから流れる汗を手の甲で拭い、深呼吸をした。

ハコガクの制服を着た生徒達が行き交う校内を眺めれば、くすぐったいような懐かしさが尽八の胸を満たした。
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