小噺。

□「生命の尊厳」(未完成)
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「生命の尊厳」

「…白澤兄様…」
「うわっ!どうしたの⁉︎」
「…私…私…」
『カタカタ…』
「何が有ったかは知らないけれど、お入りよ。甜茶を淹れてあげるから、取り敢えず、落ち着いて」
『コクン…』
「ん。良い娘」


『ズズッ…』
「で?光、お前がそんなに取り乱すなんて、珍しいね。どうしたの?」
「…」
「光?」
「…白澤兄様…私ね、…妊娠、したの…」
「へぇ、そりゃおめでとう」
「…」
「…光?顔が真っ青だよ?大丈夫?熱有るんじゃない?」
「…私は、大丈夫よ…」
「…。ちょっと手首出して。脈測るから」
『すっ…』
「…ちょっと速いね…。それに、不整脈も出てる。…ねぇ、何が有ったか教えてくれる?」
「…」
『コクリ…』
「…私、妊娠したの…」
「うん、さっき聴いたよ」
「…それも、一卵性の男女の双子を…」
『ガタッ…』
「う、そ…」
「…本当よ…。…昨日寝ずに話したもの…」
「ちょっと待って、光。誰かと交わってないよね⁉︎」
「…誰が交わるものですか…」



「…鬼灯飲む?今ならまだ、間に合うかもしれないよ?」
『バッ…』
「何で白澤兄様までそう言うのよっ‼︎私はこの子達を産んで、一緒に生きるのっ‼︎」
「…ごめんね…」
「…何で、皆して、この子達を殺そうとするの…」
「…光、落ち着いて。一つ、昔話をしてあげる」
「…聴きたくないわ…」
「光、座って」
「…」
『すっ…』
「良い娘」
『ニコッ…』
「そうだな…あれは、清華が生まれた辺りだ…」


「あれ…?こんな処に柘榴の樹なんて在ったっけ…?」

清華はね、人間が自分の子をその手で故意に殺した瞬間に、生まれたんだ。
その子は何も解らない赤児だったかもしれないし、物心ついたばかりの子だったかもしれない。
恨みも哀しみも幸福も何も無い、唯純粋な疑問だけをその子が想った。
まぁ、どちらにせよ、その子が死んだ瞬間、親に対して想った、何でと言う疑問が清華を生んだ。



赤児の清華は柘榴の樹に引っ掛かってた。
柘榴の実みたいに真っ紅な薄い布に包まれて。
周りを見渡しても、親もその他の人も1人も居ない。
唯只、誰かに自分の存在を知らしめる様に泣いていたんだ。





「天より降りし子よ。我、汝を我が子として育てる。故に、我、汝と交わらん」



「先ず、名前を決めなくちゃ。そうだなぁ…“シンファ”…清い華で“清華”!」




「はぁくにいたま、あっこ」
「はいはい。抱っこね」
「ん!」
『ぎゅっ…』
『ひょいっ…』
「」



「白澤兄様、あれ何?」
「あれはね、蝶」
「あれは?」
「あれは樹。仙桃の樹だよ」
「せんとう?」
「桃だよ。清華が何時も食べてる奴。好きでしょ?」
「桃好きー!」
「良かった。じゃあ、あれは何だと想う?」
「樹ー!」
「うん、そうなんだけど、何の樹だと想う?」
「紅いの。甘いの」
「うーん、当たりっちゃあ、当たりかな?あれはね、柘榴。お前が引っ掛かってた樹だよ」
「清、あれに引っ掛かってたの?」
「うん。ずっと泣いてた」
「嘘。清、泣かない」
「本当だよ。清華が彼処で泣いてなかったら、僕は清華に逢えなかった」
「…清、誰?」
「清華は清華だよ?」
「…清、何処?」
「清華は、此処に居るよ?」
「…清、何?」
「清華は、…」
「…何?」
「清華は、清華だよ」
「…」
『ニコッ』
「うん!清は清!」






「白澤兄様?」
「…ぅ…すぅ…」
「お昼寝?」
「清華、近寄っちゃ駄目‼︎」
「白澤兄様‼︎」
「…ん…?」
「うわ、ヤバ…」
「ふわぁ…よく寝た…。やぁ、白」
「黒澤…」
『ひょこっ』
「似てる…」
「だから、清華、近寄っちゃ駄目だって‼︎」
「…シンファ…?」
「清華、向こう行ってて」
『ふっ…』
「おいで、清華」
「はーい」

「そいつは、凶兆の印、黒澤。僕の…半身みたいなモノだよ」
「モノ言うな」
「黒澤、兄様?」


「清ね、想うの。悪い事が在るから、良い事は良い事なの。だから、白澤兄様も黒澤兄様も好き」


「…鬼子母神か…」
「え?黒、知ってんの?」
「お前は知らなかったの?白」
「う…」
「左の袂に何が入ってるの?」
「えっとね、柘榴!」
「一つ、くださいな」
「良いよ。皆で分けっこね」




「笛?」
「そう。笛。龍笛って言うんだよ」
「…清も吹ける?」
「吹ける吹ける」


「これは?」
「琵琶」
「あれは?」
「二胡」
「それは?」
「箏」




「清華、男女七つにして同衾せず、だよ」
「う…」
「?清華?」
「ふわぁぁぁあん」
「えっ、ちょっ?」
「白澤兄様は私が嫌いなんだー‼︎」
「そんな事無いって‼︎」
「だって、だって…ぐすっ…」




「にににに、兄様っ‼︎大変です‼︎」
「どうしたの?慌てて」
「お腹から声がしたんです‼︎」
「清華、落ち着いて。何か変な物食べてお腹壊したんじゃない?」


「清華…布団敷いてあげるから、取り敢えず寝て。きっと疲れて幻聴が聴こえたんだよ」


「清華、腹診せて」
「え…」
「大丈夫。変な事しないから」
「…」
『ぺろっ…』
「んー?どれどれー?」
「…」
『ぺたぺた…』
「腸の蠕動運動は異常なしと。ちょっと押すからね?痛かったら言うんだよ?」
『ぐっ…』
『痛いっ』
「!」
「…ね?」
「…清華…お前、何時の間に腹話術使える様になったの?」


「…嘘…何か居る…」
『何かって何よ。私はこの銀清華の娘、銀梔美です』


「…清華、ちょっと喉に手、当てるよ?」



「…ねぇ、兄様…」
「何?」
「…兄様は、どう想ったの?私を見付けて、育てようと想った時…」
「…うーん…。最初は、興味本位だった」
「…」
「否、一応、愛情とか憐れみとか、色々な感情は在ったよ⁉︎」
「…」
「…でも、お前を育てていく内に、責任感とか、

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