小噺。

□「赫いアザミ」(未完成)
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「赫いアザミ」

鬼灯が閻魔大王の第一補佐官に成って暫く。

「鬼灯ちゃーん」

「鬼灯ちゃん、鬼灯ちゃん」
「何ですか?清華さん」
「はい。其処で摘んで来たの。あげるわ」
「アザミ…ですか?」
「そうよ。綺麗でしょ?」
『すっ…』
「こうするともっと綺麗」

清華は鬼灯の左横の髪を耳に掛け、其処に咲きかけのアザミを一輪挿した。

「あの、私は女性ではないのですが…」
「良いの。似合うんだから」

清華は満足そうに微笑うと踵を返して仕事に戻ろうとした。

「あ、それ、外したら駄目よ?…まぁ、どうしてもって言うなら、水を入れた器にでも挿しなさいな」

今度は悪戯っぽく微笑って、今度こそ仕事をしに大焼処に戻って行った。



「あの子は気付くかしら?アザミの花言葉」



「大王、私が行くわ」
「だけど、…」
「いざとなったら、私の封印を解くわ。並の鬼神じゃ鬼子母神には敵わない」
「清華ちゃん…」
「良いのよ。この子を預かる前から、こう言う事になるのは視えていたの。黙って居たのは悪いと想うわ。けれど、この事を話したら、貴方は私に鬼灯ちゃんを預からせてくれなかったでしょ?」



「あ、梔美に、縷羅に絶対に手を出させない様にって、言伝をお願いします」





「鬼灯ちゃん、呵責しに行くわよ、大焼処まで」
『ニコッ』
「…何か、楽しそうに観えますが…清華さん…」
「ん?気の所為よ、気の所為」



「…この亡者は?」
「好きにして良いわよ。煮るなり焼くなり、呵責するなり」
「…清華さん、貴女、知ってるんですか?」
「何を?」
「…この亡者達が、孤児だった私を、神への捧げ物として殺した事を…」
「知ってるわよ。貴方を連れて来たのは、私なんだから。知らない筈が無いわ。雲の隙間から、ずっと観ていたんだから…」
「…私、本当に、加減しませんよ?と言うか、出来ません」
『ニコッ』
「ふふっ。良いわよ、それで」
『なでなで…』
「生命の尊厳を示しなさい」
「…」



「…ぁー…はぁー…」
「鬼灯ちゃん」
「…ぁー…はぁー…」
「満足した?」
「…ぁー…はぁー…」
「苦しいでしょ?」
「…ぁー…はぁー…」
『ぎゅっ…』
「お疲れ様」
『なでなで…』

「鬼灯ちゃん、知ってる?アザミの花言葉」
「…知りませんよ…」
「…復讐、満足、厳格、独立、触れないで…よ」
「…」
「鬼灯ちゃん、他人を憎むのは、簡単だけど辛い事よ。一方で他人を愛するのは、難しいけど幸せな事よ」

「お腹空いたでしょ?落ち着いたら、一緒にご飯食べましょ?」






「鬼灯兄様…?」



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