*夢――雨降り貴婦人

□4.ポートマフィア
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前回の続き。



太宰サンガ首吊リ失敗デ助ケテホシイト国木田サンニ連絡アリ。


ドノミチ太宰サンノ変ナ嘘ノセイデ助ケニ向カウモノハ誰モイナク、


私モ仕事ニ取リカカリ、現場ニ向カオウトシテ外ヲ歩イテイル時ダッタ。




「・・・何してるんですか」


「あ、ちょっと名前ちゃん?良かった、やっと来てくれたんだね。

 もうそろそろ体力の限界。助けて。降ろして」



大きい松の立派な木に縄。


その縄に、太宰さんの襟紐が絶妙な長さで引っかかっている。


太宰さんは一生懸命爪先立ちしていた。


確か電話を受けてから2時間は経っているはずなんだけど。




キュッ

「あ」


「ッんぐ!?何したんだい名前ちゃッ・・・し、締まッ・・・」


「すいません、ちょっと捻じれてしまって」


「ちょ、息が、死、」


「万々歳じゃないですか」


「はやくッッッ!!!」



ちょきん。


ハサミがあるのを忘れてた。


縄を切ってやると、太宰さんはふう、と息をついた。


この人、自殺マニアだが苦しいのは嫌いらしい。



「いやあ、ちょうどいい松の木があったものだから」



自殺しようと?



「だって松の木といったら首吊りじゃないか」



苦しいのは良いんですか?



「なんせここは人目に付きづらいし、余り問題にならないと思って」


「・・・じゃあ最初から電話なんて使わんで下さいな」


「・・・すいません」



正座で座る太宰さん。



「もう」



しょうがないですね、と、私は手を差し出した。



「・・・」


「?」



一瞬戸惑った顔をして、太宰さんは私の手を取った。



「何か?」


「あーいや、何かこういうの、前もあったなって。逆だったけど」


「逆?・・・ああ」











太宰さんが手を差し伸べて。


それを私は振り払った。
 

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