*夢――雨降り貴婦人
□2.武装探偵社
1ページ/2ページ
舞台が終わった後、どんな役の人よりも早くに着替え、化粧を落とし、『団体関係者室』へと急いだ。
「やぁ」
「こんにちは」
中には、私が今本職として働いている『武装探偵社』の先輩――江戸川乱歩がそこにいた。
突然だがこの男、非常に頭がいいくせに何かと一般常識がない。
現に今だって、三人掛け用の長椅子のど真ん中にでかでかと座っているのだ。
非常識極まりない。
「じゃあ、行きましょうか」
「そうだね。座りすぎて疲れちゃったよ」
『じゃあ行儀良くそこら辺に立ってろよ』何て言わないのは私の優しさである。
武装探偵社は荒事を専門とする、いわばちょっとハードな探偵事業なのだがその中には『異能』と呼ばれる者達が働いている。
私もその一人。
ただ、乱歩さんは能力者でもないのに探偵社に居たりする。
それはやはり、‛普通の人'でありながら能力者と同等以上の位置づけにいるということだ。
そんなわけで、我儘振り撒き放題である。
「今週は劇場だって、よく分かりましたね」
「分かるさ。多趣味の君だから他の人には見つけられないと思うけどね」
ようするに、『僕にかなう奴はいないさ』ってね。
「――さすがですね、乱歩さん」
「当たり前じゃぁないか。こんなの朝飯前だからね――」