客室〜テニスの王子様 夢
□夢でKISS KISS KISS
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――――――白石蔵ノ介――――――
カブトムシが大好きで、毒草のことなら何でも知っている蔵ノ介。三年生に上がってから、学校新聞に【毒草聖書】という推理小説を執筆し始めた。
とにかく面白いし、ネタ出しのためなら東京まで出向いて事件を起こすというプロ顔負けの力の入れよう。
教えてくれないけれど、私をモデルにしたキャラもいる、らしい。
「なぁ」
「何?」
原稿用紙を前にお悩み中の作家先生にジュースを飲みながら返事をする。
「実験台になってくれへん?」
なんて言うからなんだと思ったらキスシーンの描写をしたいのだそう。二つ返事で了承したら、いきなり舌を入れられた。しばらく没頭して、そしてあっさりと離れられる。
ちょっと寂しくなったけれど、やっぱり最高やな、なんて呟く声がしたから許す。
後日聞いてみたらキスで毒を盛るシーンの描写だったそうで。その日私は一日中師範のそばから離れなかった。
――――――忍足謙也――――――
カツ丼を9秒で平らげる謙也は、キスさえも性急で、あともうちょっとしていたいと思う時もさっさと離れていってしまう。
あとを追いかけてもちゅ、と軽く触れられるだけで終わってしまう。
だから、私は謙也の膝に向い合せになるように座って。首に手を回して。
たじろぐ彼にもう離すまいというくらいの勢いで口づける。
見てなさい、スピードスター。
じたばた動きたいと思っても離れてやらないんだから。
そう思ってたら押し倒された。
――――― 一氏ユウジ――――――
彼はいつだって小春に夢中で。ネタと本気の境目がよく分からなくなる。
アイツはいつだって本気や、と皆は言うけれど、それは二股ですよ?
さすがに小春もキスまでは許せないらしく、ユウジの唇は私だけのもの。恐る恐る目をあけると切れ長の瞳とかち合う。
「どないしたんや」
なんて、漫才の最中は絶対に聞けない優しい声。鼓膜を震わせて、私を溺れさせる。
かと思うと、「小春ぅ〜」だなんて。もう慣れた、けど。ちょっとヤキモチ。
そんな私の恋愛相談の相手は言うまでもなく小春だ。
―――――財前光―――――
「なんですか先輩」
だって、キスしたかったんだもん。学年が違うとこんなにも会えない。放課後誰もいないのをいいことに教室に連れ込んで背伸びして、ほんの少しだけ触れるだけのキスをした。
なんですか、て、財前はご機嫌なのか怒っているのかの境目がよく分からなくて。
もう一度口づける。今度は喉に。
「はあ…しゃーないっすわ」
言って床に押し倒されたから、ああ、ご機嫌なんだ、って思った。
その思考もすぐに始まった深い深いキスで途切れたけれど。