涙 雨

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壬生寺に着く頃には
幾つもの水溜りが地面の上に姿をあらわしていた。


「あれ…誰もいない…。」


人けのない境内に私の歩く水音が響く。


龍之介…帰っちゃったのかな…。


ぐるりと辺りを見渡していると
石段に座っている人影に気づく。


「…沖田さん?」


頭上に傘を傾けると俯いていた沖田さんが
ゆっくりと顔を上げる。


「…花ちゃん。」

「沖田さん…。
こんなとこに座ってたら風邪ひいちゃいますよ?
早く屯所に…。」

「…そうだね…。」


石段に座る沖田さんの手が
不意に私を引き寄せ胸に擦り寄る。


「…今日はずっと一緒にいてよ。」


腰に回された沖田さんの腕に力がこもる。


早鐘をうつ鼓動も…

熱を持った頬も…

沖田さんには全部気づかれてる…。


「…いいよね?」


私を見上げる沖田さんの瞳が切なげで…。


私は小さく頷いた。




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