追 憶
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伊東さんと共に新撰組を抜けた
斎藤さんと平助兄ちゃんは
御陵衛士に任命された。
そんな2人と一緒に屯所を後にして
どれ位が経ったのか…。
季節は巡り…
春が過ぎ…
夏が過ぎ…
そして
秋が通り過ぎようとしていた。
「茜…。」
聞き慣れた声に振り向く。
「あ、斎藤さん…おかえりなさい‼︎」
「平助はどこだ…。」
「…え?お兄ちゃんなら部屋に…。」
「茜…よく聞け。
平助を説得するには今しかない。」
私の両腕を掴んだ斎藤さんの瞳が鋭く光る。
「…それって…。」
「…分かるな?」
斎藤さんの言葉に小さく頷く。
急がなきゃ…。
『俺は平助を死なせたくないんだよ。』
土方さんが切なげに呟いた言葉が
浮かんでは消える。
私は平助兄ちゃんの部屋へと駆け出した。
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