追 憶

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池田屋事件から2ヶ月程が過ぎたある日…


旅支度をしている平助兄ちゃんのそばで
私は小さな不安を抱えていた。


「ねぇ…本当に行くの?」


隊士の勧誘の為
江戸に行くことになった平助兄ちゃん。


前髪に隠れていて目立たないけど…

平助兄ちゃんの額の傷は完治したのかな…。


あんな怪我をしたばかりなのに長旅なんて…。


「大丈夫だって‼︎そんな心配すんな‼︎」

「…心配するよ…。」

「じゃあ…茜も一緒に行くか?」


…え?


平助兄ちゃんと一緒に?


江戸って東京のことだよね…。


まぁ…江戸がどんなとこなのか
気になることは気になるけど…。


「行かなーい。」

「行かないのかよ‼︎しかも即答‼︎」


ケラケラと笑う平助兄ちゃんにつられて私も笑う。


こんな時間がずっと続けばいいのに…。


そんな願いも虚しく…

平助兄ちゃんは笑顔で手を振ると
屯所の門をくぐり江戸へと旅立って行った。


どうか無事に帰ってきてね…。




それからまた2ヶ月程が経ったある日。


平助兄ちゃんの後を追って
江戸に行っていた近藤さんが
新入隊士を連れて京に戻ってきた。


「近藤さん‼︎おかえりなさい‼︎」

「茜くん‼︎ただいま‼︎
変わりはないかい?」

「はい‼︎」

「あなたが茜さん?」


近藤さんの後ろから顔を出した
ちょっとオカマっぽい人が
私を見て驚いている。


いやいや…。


驚きたいのはこっちですよ…

とは流石に言えない。


「本当に藤堂さんにそっくりね‼︎」


あ…そういうことか。


ここは…

オカマさんに話を合わせるべき?


それとも…

兄妹なんて嘘ですって言うべき?


「え〜と…。」

「そうなんですよ‼︎
それにとても仲が良いんです‼︎」


近藤さんがこっそり目配せをしている。


…なるほど。


「兄がお世話になってます。」


一世一代の営業スマイルで頭を下げる。


「本当に可愛らしい娘さんね。
これから宜しくね。」

「こちらこそ宜しくお願いします‼︎」


そんなこんなで
伊東甲子太郎さんという人が
新撰組に加わった。





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