涙 雨

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「花ちゃん。お客さん来てるよ?」

「お客さん?」


雪さんが私の隣に走り寄ってくると
耳元で囁く。


「新撰組の土方歳三。」

「え?」

「間近で見られるなんて感動‼︎
噂通りのいい男だよ‼︎」


ほんのり頬を染めている雪さんが可愛くて
思わず笑みがこぼれる。


「雪さんの浮気者ー。」

「なっ…もう‼︎早く行った行った‼︎」


雪さんに背を押され
店の1番奥の席に向かう。



鬼の副長と呼ばれる
新撰組の土方歳三さんが
私なんかに何の用だろう…。


もしかして、また
さかもと何とかって人の話…?


震えそうになる掌を強く握る。


「あの…。」


私の掠れた声に土方さんが振り返る。


「…お前が…花か?」

「…はい。」

「ふーん…。」


ふーん…って何だろう?


怖くて聞けないけど…。


「ま…そんな怖がんな。
今日は頼みがあって来たんだよ。」


土方さんに促されて隣の席に座る。


「頼み…ですか?」

「あぁ。総司の面倒見てくれねーか?」


そう言って土方さんはニヤリと笑った。




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