涙 雨

□4
1ページ/4ページ




「あっちむいてほい‼︎」

「わー‼︎また負けた‼︎」

「龍之介くん弱すぎだよ。」

「総司が大人げないだけだよ‼︎」



龍之介と沖田さんのはしゃぐ声が
開店前でひと気のない店内に響いている。


壬生寺で会ったあの日以来…
沖田さんは時間を見つけては
桜花堂に顔を出すようになった。


お団子を食べてから
龍之介と遊びにでかけて
夕方になると龍之介を送りに
また店に顔を出す…という感じ。



「こら、2人とも‼︎
もうすぐ開店だから外で遊びなさい‼︎」

「えー?今日曇ってるよ?」


雪さんの言葉に
龍之介が暖簾をめくってため息をつく。


「曇ってたって平気です‼︎
ほらほら。早く行った行った‼︎」


雪さんに背を押され店の外に
出された2人を店先で見送る。


「いってらっしゃい。」

「いってきまーす‼︎」


私の言葉に龍之介と沖田さんが
片手を上げて応える。


なんか…兄弟?親子?…みたい。


2人の背中が見えなくなったのを確認して
私は暖簾に手を掛けた。




雨粒が地面を濡らしはじめたのは
それからすぐ後のことだった。


「やっぱり降ってきちゃったか…。
龍之介に怒られるな…。」


雪さんが小さく肩をすくめる。


「私、迎えにいって来ますね。」

「ごめんね。お願いします。」


雪さんが大げさに頭を下げる。


「ふふっ。
では、行ってまいります。」





次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ