涙 雨

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花side 〉〉〉


「あ…雨だ。」


お客さんの声に暖簾をくぐって外に出ると
さっきまで晴れていた空が
幾つもの雨粒を落としている。


「この傘使ってください。」

「ありがとう、花さん。
今度、返しに来るよ。」


差し出した傘を受け取ると
お客さんは笑顔で帰って行った。



「雨足も強くなってきたし…。
今日はもうお店閉めようか…。」


いつ間にか店の外に出てきていた雪さんが
どんよりとした空を仰ぎ見て小さくため息をつく。


「そうですね…。」


この調子だともうお客さんは来ないよね。


「よし。さっさと片付けてのんびりしよ?
花ちゃん。暖簾お願いね。」



雪さんはそう言って私の肩をぽんと叩くと
店内に戻り片付けをはじめた。



雪さんのお店に住込みで働くようになって
どれくらいの月日が経ったんだろう。


本当の妹の様に可愛がってくれる雪さんに
いつかきちんと恩返しが出来るかな…。



テキパキと仕事をこなす
雪さんの背中から視線をはずし
暖簾に手をかける。





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