*長編*
□腹黒いやつ(2)
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「く、来るな〜!」
走って逃げる俺を追いかける影。
ハァハァ、と息は上がり上手く走れない身体を必死に動かす。
だが、走った先は壁で行き止まり…
ぎゅっと影が俺を抱き締め耳元で呟く。
「捕まえた♫
りょーすけぇ」
「おわぁあああー!」
ガバリ、と起き上がった俺は夢であったことに安堵する。
【腹黒いやつ】
それにしても嫌な夢を見たもんだ。
もうこんな悪夢を見て、寝れそうにもないから準備をすることにした。
今日は撮影がある。
しかもよりにもよってHay!Say!7の撮影だ。
昨日の告白ともとれる強迫を受けた俺は
更に知念に会いたくない。
いつものリビングに腰掛け
「憂鬱だなあ〜」
なんて呟いた。
知「涼介憂鬱なんだ?」
山「そりゃ憂鬱だろ」
知「へ〜なんで?」
山「なんで……
……って!」
恐る恐る横を振り向く。
(!!!!!!!!)
そこには自分家のようにくつろぐ知念が隣に居る。
しかも頬杖なんてついて余裕たっぷりだ。
山「か、かぁーちゃーん(泣)」
思わず上擦った声は女子のように高くなってしまった。
山「あ!そっか♫
俺まだ夢見てるんだ」
納得した俺に向かって知念がほっぺたを伸ばしてくる。
知「りょ〜ちゅけ〜
もう朝ですよ〜」
山「いひゃい(泣)夢ひゃなひ」
(※注:痛い(泣)夢じゃない)
ぷにぷに〜だとか言って
遊ぶ知念の手を俺は外す。
山「じゃ、なんで知念居るんだよ!!」
山母「こーら!涼介!
せっかく迎えに来てくれたんじゃない!」
ゴツン、と母ちゃんに頭をぶたれる。
(母ちゃん…痛い(泣))
山「なんで母ちゃん、勝手に家に入れるんだよー!
危ねえだろーが!」
山母「何言ってんの!
知念ちゃんは涼介と一緒のグループで一緒の高校に通ってるじゃない!
それにあんただって知念ちゃんのお家に行ったことあるでしょ?」
山「ぐっ!(確かに)」
知「…っということだから、
涼介早く準備して♫」
(知念のやつ…
母ちゃんを味方につけやがって…)
母ちゃんは知念に上手く騙され、
やけに機嫌良く仕事に行く準備を始める。
イライラしつつ、
朝食に手を伸ばす。
じーーー。
(あ、飲み物飲もうかな)
じーーー。
(………)
じーーーーーー。
山「だぁーー(怒)
食べにくいわ!!一体なんなんだよ!!!」
知「なにって……
可愛いなあ…って(ニッコリ)」
ポロっと手から箸が落ちる。
それもそのはずだ。
少女漫画に出てきそうなセリフを
少女漫画に出てきそうな美少年が言ったのだから。
ただ問題なのは…
山「俺は男だー!
可愛くなんかねぇー!」
知「可愛いよ…とっても!
僕くらいね!」
にっこり笑う悪魔。