*短編*
□雨空
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雨が降ってる。
ポツポツ…
次第にザァーザァーと。
身体から熱を奪ってく。
それも、心地いい。
もっと降っちゃえばいい。
どうせならもっとー…。
「知念、お前何してんだよ!」
「何って。
…立ってるだけだよ」
「…。
雨ん中傘もささないで立ってたら風邪引くだろ?
中、入ろうぜ?」
「いい、涼介だけ入っててよ。
僕は…」
涼介が後ろからそっと抱き締めてくる。
僕、涼介のこういうとこ好きだな。
「いやだよ、お前を置いてくなんて俺が…
出来ないの知ってんだろ?」
「じゃ、涼介も風邪引いちゃうね♪」
僕が笑って言っても、涼介は笑わない。
…気付いてるんだ、最初から。
「知念、
一人で抱え込むな…」
「…それが出来たなら
だれも苦労しないでしょ?」
「じゃ、せめて…」
ーここに居させてー
願うように、
祈るように、
耳元で囁いた涼介の声は雨音で消える。
どうせならもっと降っちゃえばいい。
そうやって悲しみも
どっかに流れちゃえばいい。
誰にも打ち明けたりなんてしない。それが涼介だって…
知らなくていいんだ
この気持ちの処理の仕方だって僕は知ってるから。
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「…涼介。
僕は全然平気だよ」
そう言って僕は笑った。
いつの間にか雨も止んでいた。