Melody.
□ある日の隠れ穴
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パンをかじっているうちに、他の兄弟も続々と起きて来た。
この夏休みは珍しく家族全員が隠れ穴に揃っている。
ビルが帰って来ていることに妹のジニーは大喜びしているし、弟のロンもチャーリーに遊んで貰えて嬉しいようだ。
そんなロンは今年からホグワーツに入学する。
入学して来たらいっぱい悪戯してやろうとフレッドと企んでいるので、楽しみだ。
「モリー。新聞にあの子が載っているぞ。」
「あの子って?」
よく分からない事を言い出す父に、すかさずフレッドが尋ねた。
「ママがファンの日本人の女の子だよ。そういえば、ロンと同い年だ。」
「アーサー、見せてちょうだい!
…あぁ、やっぱり可愛らしいわねぇ…キモノも綺麗だし!」
「ねー、ママ!私にも見せて!!」
ジニーが母から奪い取った記事を横から覗き見する。
目に飛び込んで来たのは、まるで日本人形のような女の子。
新聞の写真でははっきりとは分からないが、きっと艶のある黒髪に、吸い込まれそうな黒い瞳をしているに違いない。
ジョージは一瞬で、その少女に目を奪われた。
そして言葉も失った。
ずっと、じっと写真の中の少女を見つめていた。
「へぇ〜。可愛らしい子だな。…コトという楽器を弾く子なのか。」
「そうよ。琴っていうのは日本の古い楽器でね、とても綺麗な音がするの。心が洗われるような…」
「この子、マグルじゃないの?」
「日本で生活してるけど、マグルじゃないのよ。純血の魔法使いよ。マグルの間でも人気があるみたいだけど…。」