補充2

□闇に従順な者
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明るい声が城内に響いた
その声はとある部屋から、襖を通し声が筒抜けである
ある人物に面白そうに会話をする武者は横に二本の刀と砲筒を置いている
ニコニコと楽しそうに話すその武者に黒い武者…魔刃は目を細める

『それで聞いてくださいよ!あの時の敵の顔が面白いのなんのって…!』

「…ほぉ、今回は間違いなく敵を殺せたのだな焔逝」

焔逝と名を告げられた武者は嬉しそうに笑う
そして

『いいえ!普通に分からず斬ったものが敵でした!』

「……またか」

焔逝はよく敵と味方の区別が付かず勘でするところがあった
しかもその勘で全て敵を倒せるのだからそれはそれで凄いと思う
今まで焔逝が勘で頼って敵を倒して味方を間違って殺したという報告は一度も聞いた事がなかった
それ故に、魔刃は焔逝を気に入っていた
いらなくなったら捨ててもいい
しかし焔逝は魔刃に忠誠を誓っており、中々いい働きをしていた
今のところ焔逝を魔刃は切り捨てる気はなかった

『でも面白いですよー?ぶっ放したら皆吹きとぶんですよ?』

その時の弾け飛ぶ敵の姿!
何とも見ごたえのある光景であった!
嬉しそうに話している内容はどれも酷いものばかりであるが…魔刃は黙ってその話しを聞いていた

「中々、本当にお前はよく働く」

手招きをする
そうすれば素直に従い何も考えず近づく
近づいてきた焔逝の頭を優しく撫で上げる
目を細め、気持ちよさそうにしている焔逝の姿はまるで犬か猫のようである
尻尾があればそれは嬉しそうに左右に揺れているであろう

『魔刃様、ご褒美』

見上げそれを待つように笑う
魔刃は目を細めるととあるものを取り出す
そう、それはみたらし団子である
それを見た瞬間焔逝の目が輝く
みたらし団子は焔逝の大好物であるのだ

「ふん、これの何処が美味いのか分からないが…褒美だ」

それを渡すとまるで子供のようにはしゃぐのだ
表情がよく変わり見ていると飽きない
本人は気付いてないが闇と光を両方持っている焔逝に触れると少しばかり手が焦がれてしまう時があった
今は魔刃と共にいる故に闇のほうが多いが…あの紅零斗丸達と行動を共にしてしまえば瞬く間に光に染まってしまうだろ

(まぁそんな事はさせないがな…)

焔逝は何かと気が利く
運が強い
だからこそ必要なのだ
魔刃はニヤリと細く笑み、不気味に笑う

「焔逝、次も頼むぞ」

鉄機武者達と共にな
そう言えば焔逝は笑う
迷うことなく頷きはしゃぎまわる
子供のようで中々抜け目の無い武者
焔逝は鉄機武者ではない
だがその命は魔刃に捧げていたのだ
どんな時でも魔刃の言う事を聞く人形のように

『魔刃様のご期待、裏切りません!』

どんな事も貴方様の為ならばいたしましょう!
それが俺の幸せであり貴方様への忠誠心なのです!!
狂った感覚
それでも正常である事には代わりの無い忠誠心
焔逝は狂ってなどいない
狂ってはいないが考え方が可笑しいのには変わりなかった
純粋故に真っ直ぐその信念を貫く
一番厄介であるが焔逝はその事に気付いていなかった

「…くく、面白く馬鹿で真っ直ぐで…、愛おしい」

笑い見る
誰かとかさね見るように切なく笑うのだ
その事に焔逝は気付いていない
気付かないまま
ずっとずっと
魔刃の元で
動くのだ



END

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