補充2

□雇われ騎士とは自由
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お金があればどんな依頼でも難なくこなす
金額次第でそれ相応の働きをする、否、それ以上の事もしようじゃないか
だから全ては金だ
金が高いほうへつく、それが傭兵である自分の中での決まりだ
金に貪欲だって?
それの何が悪い
世の中は金だ
金以外に何がある?
友情?仲間?信頼?絆?
どれも金の前では天と地の差があるに決まっている
そんなものよりも信用あるのは金の力だ
どれだけ自身の信念を貫く奴でも金の前では無意味
揺らぎ金の力に溺れる
案外心地いいものではある
居居心地いいものであるが後戻りは無理だ
金の力のよさを知ってしまえば戻れるものも戻れなくなる
当たり前だ
金で動かせないものなんかない
本当に動かせないものは死体か使えなくなったキチガイだけなのかもな
金の力が偉大って事教えてやるよ
金さえあればどんなに辛い依頼でも引き受けてやるよ

それが雇われ騎士である俺の信念だ





空が一段と曇っていた
先ほどまで太陽が見えていたが今では分厚い灰色の雲によって遮られている
青い空は遠くの地平線まで見えず
広がるのは灰色の雲ばかり…
足場の悪い山の中を歩き続ける
左目につけられている眼帯は古き傷を隠すかのようである
右目にある紫色の瞳はキラリと不気味に光る
布の中にしまわれている武器は少しだけ振動につられて音をたてる
パキリッと枝を踏み音がなる
荒々しくも木々を抜け、息を吐く
姿を隠すかのように布に包まれているそれはダンッと苛立ちを隠さぬかのように木へと八つ当たりをする
右拳が木をなぎ倒し派手な音を立て地面へと吸い込まれるように横たえられる
何に苛立っているのかは分からない
否、本当に苛立っているのだろうか
布に隠されている顔
分かるのはそれはMS族だという事である

『糞、あの野郎…あれだけの報酬でこの俺を動かせると思ったのかぁ?なめてんな、完全のこの俺をなめてやがる』

ブツブツを文句が口から零れる
文句というよりは愚痴である
数々の罵声がスラスラとまるでマシンガンのように吐き出される
規制をかけなければいけないような言葉まで出ている

『たかが数万…富豪ならもうちょっと出せよな、これだから嫌なんだよ富豪様様の相手はよぉ!!』

糞!と勢いよく木を蹴りズカズカと歩みを進める
MS族、もとい雇われ騎士ノイジィはれっきとした傭兵である
金で雇われ、任務をこなす者の一人でこのノイジィは金に対して非常に貪欲であった
そして今、依頼の真っ最中なのである
依頼をくれたのは先ほど話題に出された富豪である
彼等はノイジィを雇い、自分達の利益にならないものたちを削除しろと言い放ったのである
依頼自体はいいのだが問題はお金の金額である
期待していた額より遥かに少ないのである
富豪は前払いと言っていたがきっと後払いなどしないであろう
何故なら先ほどから後ろに何人かついてきている気配がするのである
気配だけではなく隠しきれていない足音
ノイジィはやれやれと脳内で首を振る
どうせ前払いと渡されたこの金はこの依頼が終わると同時に後ろからついてくる者たちが回収しようとするのであろう
ノイジィを殺した後に

『…笑わせてくれるものだ』

冗談ではない
やっとの事で此処までこぎつけたのだ
みすみす金を渡す訳がないのである
そもそも後ろの者たちは敵ではない
いざとなればこちらが返り討ちにする事などたやすい事…
裏切りは何度もした、偽りの信頼も友達ごっこもした
それもこれもお金があるからだ
金さえあれば何でもする
傭兵とはそういうものなのだ
当然、それ相応の実力は持ち合わせている
カチリッと布の中に隠されている手の内にあるものの安全装置をはずす
トリガーに手をかけ、口元に笑みを浮かべる
ニヤリとそれはもう楽しそうに

『この俺に喧嘩を売るということがどういう事か…分からせてやるよ……なぁ、この塵虫共が!!!!!』

後ろに向けて正確に発砲する
パァンッと乾いた音が響き渡り後ろに来ていたもの数人の脳天に風穴があく
口笛を短く吹き、地を蹴り空へと上がる
一気に距離を縮め何時の間にかその手に握られていたバルデッシュを勢い任せに振るう
ザシュッと一閃をしたかのように前に立っていたものは上半身と下半身が離れてしまう
ずるりと地面に落ち、血を流す
引き出した血を浴びながら銃に弾を補充する
そしてある一点の方へ銃口を向けると迷いなく撃つ
木々に紛れるように隠れていた相手は脳天を撃ち抜かれていた

『流石俺、銃の腕前はピカイチだぜ』

フッと銃口から出る煙を撒き散らしホルスターへとしまう
バルデッシュについた血を死体から剥ぎ取った布でふき取り歩き出す
汚れた布は捨て一度も後ろを振り返る事なくただ任務を遂行しようと歩き続ける
かけた時間は数分だけ
傭兵は歩き続ける

歩き続け、ついたのはみすぼらしくなってしまっている町だった
きっとあの富豪に税金を取られでもしたのだろう
町のところどころにいる人々の姿は見ていられなかった
痩せこけきっと何も食えていないのだろう
餓死するものさえもいたのか町には腐敗した臭いが漂っていた
ノイジィは息を吐く
まったくこれなら勝手に滅んでいくだろうに
そう思い舌打ちを零すとノイジィは先ほどの拳銃ではなくバルデッシュを持つ

『さぁてさっさと終わらせるか』

ニヤリと笑い布を取り払い駆ける
同情などしない
任務遂行して金をもらえるならばなんだってする
真っ赤になってさようなら
一つの町を滅ぼし任務を終えたことを富豪へと報告をすませる
すると面白いくらい顔をしかめ金を払うのだ
やる事はしたからな
残念だったな、馬鹿共め
お前等の計画なんざこの俺にはお見通しなんだよ
見事にぶっ潰してやった

『あー!金がたんまりだぜ!!だから傭兵はやめられねぇ!』

お金の入った袋を片手に機嫌よさそうに笑う
これで弾丸の補充と宿を確保できる
ノイジィはこう見えて名の知れた傭兵である
その為結構依頼は入ってくるのだが…
ノイジィからすれば金が入るところにしか出向かない
富豪の方へ優先的に向かうのだ
当然、それは金を貰いたいからである
ひいきと言えばそうかもしれない
金のならない話は無駄にしかならない
かと言ってノイジィに情が無いかと言えばそうではないのだ
少しでも金が入るなら助けには入る
もし雇われている場所以上の金額を出すならばそちらにつく事だってする
つまりは裏切り行為も金次第ではすると言う事だ
それが傭兵であるノイジィだからだ

『っと、その前にもう一仕事しねぇとな…次はあの大富豪でも金を巻き上げに行くかな』

ニヤリと笑う
金こそが全て
金以外のものなど必要ない
外道だろうが何だろうが

金に勝てるものなどこの世には存在しない

それだけだ



END

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