補充2

□堕落した天使
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堕ちていった
何処までも
全て自分の手の中からすり抜けて、離れていくのだ
期待など
なくなってしまった
当初の目的は達成されてしまった
だが、そのおかげで自身は堕ちていってしまったのだ
もう天界にはいけない
あれほど輝いていた先も全て
絶望や悲しみ、憎しみで染まってしまった
誰もこんな自分など
必要としてくれないのだろう…

堕天してしまった自分など

誰も見てくれなくなってしまった
…苦しい
見るもの全てが絶望している

『…あぁ…』

これほどまで苦しくなる事が来ようとは自分自身予測できなかった事であった
あれは完全に油断していた自分のせい
堕ちてしまったのは……

「あー本当に堕天使になっちゃったんだねスラオシャ」


聞いた事のない声
でも、何処か知っている声
スラオシャはノロノロと声の主を見る

『…?誰だ』

光のない瞳がそのものを映す
知らないものが自分の名を呼ぶ
会った事ないはずなのに相手は自分を知っている
変な感覚にスラオシャは眉間にしわを寄せる

「俺はミキストリ、よろしくねスラオシャ?」

ニコリと笑い、無邪気にも話しかける
近くまで来る
変わった雰囲気を持っている

「あぁ、俺は死神だよ…と、言っても元々は神であり天使でもあるけどね?」

クスクスと楽しそうに喋るミキストリにスラオシャは一歩後ろへと引く
それに気づいたミキストリは一歩近づく
笑みを浮かべたまま

『ち、近づくな…』

何故?
問えば無言になる
面白そうに目を細める
ねぇスラオシャ
俺がどんなに待ったと思ってるの?

「ずっとずっと…待ってたんだー」

君をね?
ずっと狙ってた

『何を…言って…』

ヒタリと、手がスラオシャの頬に触れる
ゾクリッとした感覚が全身を駆け巡る
ニィッと笑みが深くなる

「君を初めて見たときからずっと、狙ってた」

キラキラと輝いていて綺麗だった
堕ちてしまった自分とは天と地の差があって
羨ましかった
だから君が堕ちるのを待った
待って待って…凄く待った

そしてやっと君は堕天使になった

「どれ程この時を待ちわびた事か…」

両頬を両手で包み込む
ひんやりとした冷たい感触が頬から体を冷やしていく
体の自由が奪われていくような感覚
寒い
冷たい

「ね、俺と一緒だね」

君は堕ちてきた
俺のところまで堕ちてきた
やっとやっと
一緒なんだよ
スラオシャ

「逃がさないよ」

優しく腕の中に閉じ込める
冷たい

「君は俺のもの」

もうずっとずっと
逃がさない

『……ミキストリ……?』

徐々に瞳が濁りを帯びる
体から力が抜けてゆく
君は悪夢に捕らわれてるんだろうね
眠ってしまいなさい
次起きた時はきっと…
きっと悪夢は無くなってるよ

きっとね?

「おやすみ、スラオシャ」

もう永遠に

逃がさないよ



END

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