補充2

□生きるか死ぬか
1ページ/3ページ

日が沈む
夕日が地平線の向こうへと姿を消す
暗くなった辺りに、それぞれ向かいあい立っているMSが二機…
悪神アエーシュマと天使スラオシャであった
それぞれは敵対関係であり
特にスラオシャはアエーシュマに強い敵対心を抱いていた
どれだけの悪事を働いたか
どれだけの者達が犠牲になったか
この悪神は分かっていないだろう
だからこそ、それが許せないスラオシャは、アエーシュマをこの日を選び
鎖鎌の切っ先を真っ直ぐ向けたのだ
これ以上の被害を出さない為に
そして今日この日に

悪神アエーシュマを殺す為に

スラオシャの殺気に、アエーシュマは目を細める
何時もなら軽く流してやっているが…
今日はどうやらそれは通用しないらしい
そう読み取ったアエーシュマは息を浅く吐き、真っ直ぐスラオシャを見据える
月の光がわずかに二人を照らしている
それぞれ顔を認識するのがやっとの中
地を蹴った
キィンッ
鋭い音が辺りに響く
鎖鎌の刃を、アエーシュマは自身が持っていた鎖で防ぐ
ギリギリと力押しでくるスラオシャにアエーシュマはその力を利用し、そのまま左へといなす
すると面白いくらいそのまま左に流れるスラオシャの体めがけて一瞬で魔力を固めたものを至近距離でぶつける
ドゴォンッ
スラオシャは吹き飛び、後ろにあった木へと背を当ててしまう
崩れ落ちる体が、地面につく前にアエーシュマは距離を縮め首を掴み上げる
空気が遮断される
足で蹴ろうとするがいとも簡単にかわされる
両手を使い、首を掴んでいる手をどうにか離そうとするがびくともしない
徐々に薄れ行く意識
だが、此処で負けては元も子もない
ならば

『!』

瞬間、アエーシュマの体から血が吹き出す
右肩から左横腹にかけて大きな切り傷が出来たのだ
何時できたのかアエーシュマには認識できなかったが、すぐにスラオシャから距離をとり、その傷を魔力で塞ぎ始める
もちろん痛い
だが、それよりも…

「アエーシュマめ、貴様のような奴…誰が必要とするものか!!!」

ズキリと胸が痛くなる
だた意味は分からず、ただ今その事が酷く胸に突き刺さった
だが、そんな事でひるむ事などない

『…必要とされない事など分かってるさ、俺は好きなだけ邪魔して暴れられればいいんだよ』

ニヤリと笑い言えばスラオシャの顔が怒りで険しくなる
鎖鎌を持ち直し、駆けてくる
だからこそ、アエーシュマは
皮肉にも笑うのだ

『餓鬼め』

斬りかかって来るスラオシャを横にいなす
だが先程とは同じ手はくわないというかのように踏ん張りをきかせ、また攻撃を繰り出す
ピッと頬を掠めた刃
アエーシュマは反動をきかせ回し蹴りをし、吹き飛ばす

「っ!!」

圧倒的な力の差にスラオシャは苦虫を噛み潰したような顔をする
悔しく思おうとも…
勝てないのは事実でもある
だからこそ
諦められないものがあるのだ
すぐに立ち上がり、構える

「貴様のような奴は…この世にあるべき存在ではない!!!」

『で?』

「だから…殺す!!」

理不尽だなぁ…
そう呟いた声は届かない
斬りかかるがかわされる
何度も何度も
かわされ、防がれ
アエーシュマの表情は変わらない
ニヤニヤしたまま、スラオシャを軽く見ていた
それが酷く腹が立った
悪神だから?
自分は天使だから?
天使は神を殺せないとでも言うのか?
そんな事などない
相手が不老不死ならば殺す事は無理だ
だが
悪神アエーシュマは生憎不老ではあったが不死ではなかった
悪しき心を選んだとき、おまけがついてきたのだ
天界で暴れれば激痛が走り、心の臓を締め付ける
何故、その事をスラオシャが知っているのか
友人…と言うには皮肉だが
ある天使に聞いたのだ
終焉を司る天使に
あの天使は、普段おちゃらけているがやる時はやってくれる
本当はとても頼りになるのだ
あの天使は
だからこそ

負けられないのだ

ズシャッ
少しずつ、刃がアエーシュマを掠めてゆく
自分だってそれなりに鍛えてきたのだ
越えられぬ壁だってある

『………』

アエーシュマはそんなスラオシャを見て、少しばかりいらついてた
何度あしらっても
何度立ち上がれないほど八つ裂きにしても
飽きる事なく
何度も
何度も何度も
アエーシュマの前に立ちはだかるのだ
腹立たしい事この上ない
あぁどうしてこんなにも
五月蝿いのか
どうしてこんなにも
……
あぁあぁ
羨ましい

自身にないものを持ち
愛され
何もかも
持っている
羨ましい……

愛を知らない俺にお前は近づいてくる
愛されているお前が羨ましい
憎い
腹立たしい

『お前なんかに、絶対に殺されてやるもんか』

絶対に
死ぬもんか
お前なんかに…

『お前なんか、嫌いだ!!!』

鎖が槍に変わり、スラオシャの右肩を貫く
激痛に、顔が歪む
だが
歯を食いしばり、アエーシュマの両肩を掴み地面へと押し倒す

『!!』

「捕まえた…ぞ」

笑みを浮かべ、言ってやればアエーシュマの顔が少しばかり強張る
逃げぬようにと鎖鎌の刃がアエーシュマの片腕を貫き、地面へと縫いつけられる
少しばかり、アエーシュマに焦りが生じた

「悪神アエーシュマ、貴様のしてきた事…分かっているな?」

忘れたとは言わせない
どれだけの者達の命を犠牲にしたか
どれだけの者達の人生をメチャクチャにしたか
分からない訳ないだろう?
もし分からないと言うのなら、分からせてやる
貴様自身の死を持って償え

『…っ、うるっさい!!!天使如きが俺に指図するな!!!』

巨大な魔力がスラオシャを引き飛ばす
片腕に刺さっている鎖鎌を無理やり引き抜く
睨みを利かせ、立ち上がる
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ