補充2

□猫の日々
1ページ/2ページ

朝起きたら真っ先に違和感があったのは頭と尻のあたりであった
当たり前であるが俺はMS
あってはいけないものが何故かある
……

『んだこりゃ…』

手で触れてみるとそれは確かに存在しているもので
この肌触り、長いそれ
これは…

猫の耳と尻尾である

何でだ

それにある意味微動だにもしない白銀騎士トラヂェディであるが…
まぁどうでもいいかと二度寝する体制に入る
しかしそれはF90の怒声によって叶わなかった
バァンッと開け放たれたドアに面倒臭そうに視線をよこす
すると開け放たれたその場所には先程、怒声を上げたF90が立っていた
そしてトラヂェディを見て一言

「どうしたそれ…?!」

と、驚かれてしまった
まぁそれが普通の反応だわな
トラヂェディはその問いに答えず
寝た←
F90はそれに焦りを覚えつつ、トラヂェディを起こすべく布を引っぺがしたのだった

その日トラヂェディは仕事を回され部屋で仕事をしていた
奇妙な事になっている訳だがそれは完全無視をして
ただ円卓の騎士はトラヂェディの猫化について少しばかりの興味があるようで先程からうっとおしいほど部屋に来る
喧しい
なので部屋に鍵をかけた
それで諦めたのか円卓の騎士は皆来なくなっていた
一瞬にして静かになったその部屋に暖かい光が差し込む
鳥の囀りが聞こえた

カタンッ

窓が開けられた音がした
普段なら気にもしないのだがこの耳は小さな音でも拾い上げてしまう
あぁ何と言うか…
面倒臭い

「…トラヂェディ…それ、どうしたの?」

翠玉色の瞳でジッと見つめてくるそのMSは死神騎士クルーエルである
少し驚いた表情をしているのはこの耳と尻尾のせいだろう
トラヂェディはため息を吐く
これで何度目の質問であろうか、と…

『俺にも分からん』

そう返すしかないのだ
原因は不明
何故こうなったの、何かをした身に覚えはない
当然である
昨日は普通に回された仕事や依頼以外何もしていないのだから
外回りはなかったし
かと言って城内で何かした訳でもない
上のもの以外はずっと部屋にいたのだからこうなるきっかけなど分かりもしない
誰かの悪戯ならそいつを是非とも殴りたいとトラヂェディは心の中で誓った←

「へー…白い毛並みね…白銀のトラヂェディには似合ってるね」

窓から入りこんで来たクルーエルは静かに床に降り立ちトラヂェディへと近づき耳に触れる
動いている
暖かい
あぁこれは生えているのか…と勝手に納得する

「本物なんだね、凄い芸が込んでるね」

『…俺的には面倒臭い』

「だろうね」

不機嫌そうに目を細める友人を微笑ましく見ながらクルーエルの視線は尻尾へと向けられる
トラヂェディの気分によって揺れるその尻尾はしなやかで何ともいいがたい気分になる
その尻尾に手を伸ばし、やんわりと包み込む
するとトラヂェディはギロリッとクルーエルを睨みつける

『尻尾には触るな』

珍しくも不機嫌そうに言うものだから、クルーエルの中の悪戯心というのが反応する
尻尾には何かあるのだなと読んだクルーエルはトラヂェディの忠告を無視してその尻尾を指でなぞる

『っ!』

すると面白いくらい敏感に反応するトラヂェディがいる訳で…
あぁ、成る程とニヤリと笑う
こんなにも面白いもの…そうやすやすと手放したくない訳で…
殴ろうと握りこぶしを作るトラヂェディの体を横抱きすると乱れているトラヂェディのベッドへとその体を下ろす
抗議しようとする口を手で押さえ、尻尾で遊んでみる
結構敏感な尻尾はトラヂェディの体に快楽を与えているのかもしれない

「…へぇ、尻尾が性感帯なんだ」

目を細め見れば、トラヂェディの顔が珍しくも真っ赤である
今日は珍しいものが見れる日である
これは面白い
クルーエルは尻尾への刺激を続ける

『や、やめろ…っ、て…言って…ひっ?!』

伸ばされた手をやんわりと自分の手で絡めとりベッドへと押し倒す

「トラヂェディ、どうしたの?刺激足りない?」

ニタリと笑い言えばトラヂェディは睨んでくる
そんな顔で睨まれても全然怖くないのだが…
そういい掛けるのを止め、尻尾から手を離す
あまりやりすぎると嫌われてしまう

「ごめんねトラヂェディ、あまりにも敏感に反応するものだから…さ」

頭を優しく撫でてやれば不機嫌そうに見上げてくるトラヂェディ
舌打ちを零しゴッとクルーエルの脳天に鉄拳を振り下ろす
…まったくもって容赦のない
声にならない悲鳴をもらし、頭を押さえ蹲る
トラヂェディはそんなクルーエルを尻目に机へと向かう
やりかけの仕事をする為に

「…本当に容赦ない…いてて…」

ベッドに腰掛苦笑を零す
相変わらずな友人を見、お詫びにと歌を紡ぐ
その歌に耳を傾け仕事をやっていくトラヂェディの尻尾は左右に揺れていた

『…ふん』

少しばかり治った機嫌に目を細め
クルーエルが歌う唄を聞く
クルーエルはあまり人前では歌ってくれないのだがトラヂェディの前だけはよく歌ってくれていた
やはりクルーエルの歌う唄は好きだとトラヂェディは改めて思う
そして笑みを零すと
歌が響く部屋で仕事を続けるのだ




次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ