補充2

□神を捨てた者
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昔から、必要とされていた
どんな小さな事でも
必要とされていた
利用されていた
瞳の中に揺らめく真っ赤な炎
もう片方の瞳に映し出される宇宙のような銀河
珍しい瞳を持つ創造神であるテスカトリポカは色々なものにその瞳をねだられていた
コレクションにしたいと言う者もいれば、無理やり奪い売ろうとする者もいた
それ以外にも願い事だの何だの
色々と頼まれ
必要とされすぎ
利用とされすぎ…
純粋に信じていたテスカトリポカは身も心もボロボロであった

『俺を必要としてくれるのは何故?』

それぞれ口をそろえて言うのだ
頼りになるからと
それだけで嬉しいと思えた
何度も何度も
何故必要とされるのか考えた
だが何度もそれを問いては頼りにされているからと返された
だから疑わなかった
本当に必要とされていると思っていたから
頼りにされているからと思ったから
だけどそれはまったくの見当違いで

誰一人として頼りになどしていなかった

利用しやすいからと
必要としてると言えば、頼りにしてると言えば
お前は何でもするから
利用しやすいと言われたのだった
目の前が真っ暗になった
たったそれだけの価値しかないのかと
たったそれだけのために利用され必要とされていたのかと
情けなくも純粋に信じていた自分が嫌になってしまった
馬鹿みたいだと
何度も何度も
自分を呪った
いらないと思った
何が創造神であろうか
何が神だ
何が
なにが
ナニガ……

利用されるだけなら、こんな自分など要らないのだ
神など捨ててしまえばいいのだ
瞬時にそう思った
そうと決まれば
自身に呪いをかける
神というのを封じ込める呪いを

悪魔になってしまえばいい

そう思ったのだから
神を捨てて悪魔に
もう誰にも必要とされない利用されない悪魔に
そうだ
逃げるんだ
期待も信頼も
何もかも捨ててしまうのだ
最初から信頼など何もかも
ないのだけども

『俺は神である事を捨てる、もうこんな肩書きいらない、俺は悪魔になる』

いらないいらない
こんなものいらない




グチャリ
あぁ美味しい
何で人肉とかこんなに美味しいのだろうか
手足も臓器も全部
美味しい
生で喰うとなおさら美味しい
腹の中が満たされる
美味しい
美味しい…

『喰っちゃえば満たされる…あぁ何て素敵なんだろう』

楽しい
楽しい…
これが今の俺
創造神のときになかった感覚
笑みも愛想笑いしかできないが
誰にも嫌われるが
信用も信頼も
利用も必要も
何もないが
それが今、俺が望んでいるもの
捨ててしまえばよかったんだ
最初から

いらないものは
捨ててしまえ



END

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