補充2

□悪魔に愛された天使
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天界はつまらない
何度もそう思った
何も無ければ光ばかりが満ち溢れている
気持ち悪い
記憶を喰らうがどれも貧相な記憶ばかり
俺が好む記憶なんて…滅多にない

『あー…記憶…楽しい記憶喰らいたい』

ブラブラと足を揺らし天界を見下す
地上を見たところで意味などない
今の地上も天界も
楽しくない

『…もーそれぞれの記憶を改竄して絶望に変えてやろうかなぁ…』

さらりと物騒な事を言っているこの者は悪魔…ガルバである
記憶と破滅を司る者で魂より記憶を好んで喰らうのである
そんなガルバはこの頃好みの記憶を持つ者がいないようで腹を空かせていた
腹の虫がなき空腹を訴える
仕方ないだろとごちても空腹が満たされる訳もなく…
苛々は収まらない
早く獲物を見つけなければ…

『…ん?』

ふ、と目に入ったのは一人の天使
天界にある湖に顔を覗かせ何かしている
綺麗な白い翼が風で揺れている
一瞬で目を奪われる
あぁ…何て美しいのだろうと
ガルバは羽を羽ばたかせその天使の近くへと来る
静かに降り立ち、そっと手を伸ばす

「…?」

ガルバの気配に気づいたのかその天使は顔を上げ振り返る
綺麗な瞳がガルバをうつす

『…綺麗』

素直に思った事を言えばその天使は首を傾げる

「綺麗…?」

透き通った声が響く
空気に溶け込み、消える
ガルバはその声さえも綺麗だと思ってしまった

『…うん、お前綺麗』

隣に座ればその天使はキョトンとした顔をし、またニコリと優しく微笑むのだ
無邪気なのだと思えた
そんな天使に手を伸ばせば握り返してくれた

『お前は…天使だよな?名前は?』

今まで人に名を聞いた事などなかった
必要ないものだと思っているからだ
自身の腹を満たすだけのものなのだと割り切っているし
そもそも人などに興味など沸かなかった
だがこの天使は違う
雰囲気もそこに存在している事さえも
興味ひかれ美しく
こんなにも綺麗な天使が存在していたのかと思えるほどだった

「僕は封印を司る天使ディスピアといいます、貴方は?」

笑みを浮かべたまま自己紹介をする天使_ディスピアはガルバに名を聞いてくる
初めて人に名を聞かれ、少し目を見開くがすぐに何時ものように表情を戻す

『俺は記憶と破滅を司る悪魔ガルバっていうんだ、よろしくなディスピア』

握られている手に暖かみを感じながら答える
心にある冷たい何かが溶けていく気がした
これがもしディスピアの存在がそうしているのなばら…この綺麗な天使を欲しいと思えた
その綺麗な翼や瞳
声を…存在を独り占めしたいとさえ思えた

「僕は此処でよく湖を見ています」

『そうなのか?何でまた』

「…僕の力は不必要なのだと…言われたので…、力や体の自由さえ…色々なものを封印してしまう僕の力は厄介なのだと、言われました」

『……』

はぶられているのか
それとも孤立させているのか
どちらにせよガルバにとって都合いい事この上ない状況である
こんなにも綺麗な天使を必要としないなんてなんて馬鹿な奴等だろう
欲にまみれているのか脅威を覚えているのか知らないが必要とされていないのならば…

『ならディスピア、俺と共に来ないか?』

俺が貰っても誰も文句など言わないだろう

「ガルバ…さんとですか?」

首をかしげている姿は可愛いものでその手を強く握り締める
恐れを知らぬ天使
何も知らぬ天使
これ程まで純粋な天使がいただろうか?

『あぁ…』

ゴクリと生唾を飲み込みディスピアを立たせる
キラキラと光で輝く白い翼
美しいなぁ…
早く自分のものにしたい

「…ガルバさんが僕を望むなら、ついてゆきます」

あぁ…何と無知なのだろう
悪魔がどれほど浅ましく愚かな生き物なのか
傲慢で自分勝手で
そんな悪魔にお前はついてくるのか?
この悪魔の誘いに自ら来てくれるのか?

『なら…行こうかディスピア』

フワリと空に浮く
誘われるようにディスピアも翼を羽ばたかせ飛ぶ

独り占めしたい
これは本音
ならこの気持ちは本物_

『ディスピア』

グイッと腕を引っ張りその体を優しく抱きしめる
悪魔の瘴気がディスピアによって浄化される
何て暖かい天使なのだろう
あぁ愛おしい
狂おしく愛おしい天使を

閉じ込めてしまおう

愛してると呟けば殺してしまう

ならどうか
伝わらず
でもこの手の中に
永遠にずっと

籠の中に




END

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