補充2

□君を器と思うまで
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俺は息子のヤマの事が大好きだ
息子として溺愛しているし可愛くて可愛くて仕方ない
ヤマが成長するたびに将来の事を考え楽しみになる
だからヤマの成長の妨げになるものは全部破壊する
俺は破壊神
ただの親馬鹿です

シヴァは破壊神でありながら天界の者にも地上の者にも好かれていた
それというのもシヴァの性格上、誰も嫌えなかったからである
ニコニコと明るい笑みを浮かべ、フレンドリーに話しかけてくる
誰もがそんなシヴァを受け入れ温かく迎える
愛されているのだ
破壊神でありながら…
だがそんなシヴァにも限界というものはあるのだ
破壊衝動がシヴァを支配してしまえば残るのは焼け野原のみ
その時ばかり、皆は誰も味方してくれなくなるのだ
当然である
巻き込まれるのも破壊に巻き込まれるのも嫌なのだから

『ヤマ…ごめんね…俺は…』

体に罅が入る
ポロリポロリと崩れ落ちていく体は鎖に繋がれている
痛いと嘆いたってこの鎖は離れてくれやしない
ジワリと足元が氷つく
体に終わりが来ていた

『…っ…』

脳裏で響く声が
破壊衝動をかきたてる
だがこの体では破壊する事もままならない
何処かに自身の魂を
魂を入れなければいけない
だがこの魂を入れるW器Wとなるものは強大な破壊の力を抑え込めるものでしかできないのだ
そう簡単にいるものではない
のだが…

『…ヤマだけは…駄目なんだ…っ』

言葉では否定していたとしてもその手は息子へと伸ばされる
あぁやめて
手を出したくない
でも
でも

その体がほしい

閻魔天として
鬼神として強大な力を持つその体が
ほしい
ヤマは何も知らず此方を見ている
嬉しそうに近づいてくる
やめて
来ないで
駄目

「父上」

無邪気に抱きついてくる息子の体を優しく抱きしめ返してやる
暖かい
小さな子供の体温がシヴァを包み込む
愛しい大切な自分の子供…
だけどもW器Wとしては最高の者
鎖の音が響く

『…ヤマ』

こんなにも頼りない父親でごめんね
妻が死んだ時、お前を絶対に守ると傷つけさせないと誓ったのに
なのに今自分はその息子に手を出そうとしているのだ
情けない
破壊衝動に抗えない自身が

『…ごめんね』

ヤマの額に手を添える
せめて、記憶だけでも
寂しい思いをさせてしまうだろうけども
自分勝手な判断かもしれないけど
だけど

『俺を…忘れて』

一瞬の閃光がはじける
ヤマの体から力が抜ける
そしてシヴァの体が砕けはじめる
時間なのだ
目の前が涙でぼやける
今はまだ
この幸せを感じさせてほしい
暖かさを
感じていたい

『…ごめ……ん…ね』

意識が遠のく
記憶がなくとも大好きだよ
愛してる、愛しい息子よ

シヴァの魂はヤマの体の中へと入ってゆく
鎖はシヴァの魂を縛りこむ
破壊衝動だけが性格となり支配する
もうヤマの事を息子だと思えなかった
そう

W器Wとして

道具として

利用してあげよう



END

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