補充

□手を取り合えた者達
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目を開ければ空は綺麗な晴天であった
うっそうと茂ってあった草木は暖かな陽気に包まれ生き生きとしている
心無きモンスター達は浄化され普通の生き物達へと姿を変えていた
花々が咲き誇り、暖かな光が地上を照らす
神々しく光り輝く太陽
エヴァダンスとデフェットは顔を見合わせる
何が起きたのか分からない
しかしこの世界は“暗”の世界
だが何処にもその面影はない
気付けばあの星空で赤い月しか浮かべてなかった空は青い大空へと姿を変えていた
今までどんなに望んだとしても“暗”の世界の住人となってその光に触れる事は出来なかった
だから諦めていたのに
その光を今浴びている
足元を見やればちゃんと影があった
自分達は“暗”の世界の住人
でも
あの呪縛から解き放たれたのかもしれない
二人は言い知れぬ喜びを感じた
暖かな陽気に包まれた城
その姿はまさにフェリシダド王国そのものである
そしてその城の上空にいる二機の騎士…
クルーエルはただ黙ってトラヂェディを見ていた

「と…トラヂェディ…?」

声をかける
姿は違うは確かにそれは友人であるトラヂェディである
だからこそ、その姿は何なのか分からないのだ
一体トラヂェディに何があったのか…
分からないのだ

『…ん…』

ニコリと笑いクルーエルを見る
何時もの何処か人を茶化すかのように浮かべられる笑みにクルーエルは安心してしまう
姿が違うだけで何も変わっていない
トラヂェディはエヴァダンスとデフェット達のところへと静かに降り立つ
二人もトラヂェディの姿を見て少しばかり目を見開き動揺する

『これで“暗”の世界は…壊れねぇよ』

赤く光る瞳に、強い意志を感じる
そしてこの世界を包み込む暖かな光
二人は自然と納得してしまう
と、同時に二人はトラヂェディを神ではないかと錯覚してしまう

「な、なぁトラヂェディ?その姿って…?」

『ん?姿…?』

自身の姿を見るトラヂェディ
瞬間一瞬の脱力感に襲われトラヂェディの体が傾く
クルーエルは咄嗟に体を支える
どうしたのだろうかと思い見ればトラヂェディは寝息を立てて眠っていた
姿も元通りになっていた
クルーエル達の頭の中で浮かぶ?に首を傾げる

「…まぁ何にせよ…終わったんだな」

空を見上げて呟く
エヴァダンスとデフェットは顔を見合わせ笑みを零す
そして気絶している二人に近づき背中に背負う

「お前等はどうするんだ?」

「此処で俺等は生きる、“暗”の世界の住人である事には変わりないからな…」

「そういう事だ、俺のせいで迷惑をかけてるし…その分の罪滅ぼしを…俺はこれからするよ」

ニッと笑い言うデフェットにクルーエルは笑みを返す
これならもう大丈夫だな、と心の中で呟く
クルーエルもトラヂェディを背中に背負う
これからブリティス城に届けに行かなければ…
そう考え息を吐く

「ま、落ち着いたらこっちにでも遊びに来れば?少なくとも俺とトラヂェディは歓迎するよ」

体を浮かせる
足が地面から離れる
エヴァダンスは優しい笑みを浮かべ見る

「あぁ…きっと来る。その時は敵としてではなく…友人として…」

「…うん、いいよ」

じゃあねと零し、飛んでゆく
色々とあったが結局は憎みきれない者達
自分は何て…愚かな考えを持っているのだろうか
クルーエルは“暗”の世界から抜け出す
背で眠っているトラヂェディをチラリと見、少しだけ考える

(あの姿は何だったんだろう…あの力といいあの魔力といい…まるで神そのものだ)

小さな可能性
しかしその可能性は0に等しい事でもあった
だからクルーエルはその考えを頭の隅へと追いやった
今此処で考えてもしょうがない事だからである

「…まったく…なんだったんだろうなぁ…」

零し、目を瞑る
背中から感じる暖かな温もりだけを感じていた
太陽は暖かな希望の光で世界を照らしていた
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