補充

□時雨心地
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チリンッ

鈴の音が二つ響く
小さく小さく
しかし
此処ではその音さえも大きく響く
静寂ではあるが、異様なそれに死神であるクルーエルは静かに大鎌を構える
それを断ち切れば今までの望みも全部叶うのだ

世界を“暗”の世界で覆う

世界中に生きとし生けるものたちは全て心無きモンスターになってしまうのだ
その中で惨めに這いつくばって朽ち果てる者達を見て嘲笑う
惨めだと言った者達も
全部全部
それらを含めた全てを見返す為ならば何だってしよう
騎士団を騙す事も何もかも

クルーエルは、ただジッと待っていた
その時を
花に捕らわれた
友人
気絶しているのか
眠っているのか
それは分からないが少なくともこの花はその友人の力を吸い成長している
白銀の光に導かれ、天へと伸びるそれは神々しく
しかしそれは神々しくもあり鈍く光っているのだ
黒で染め始めているその光の中心でその友人の白銀の色は衰えることなく輝いている
クルーエルはそれがとても美しく思えた

断ち切れ

そう命令される
操り人形のように動く自身の体にクルーエルは少しばかり嫌気がさしていた
人が気絶中によくまぁ好き勝手しようとしているんだ
当然腹が立つのは当然である
何故ならクルーエルの体は今は糸で操られる人形そのものなのだから
油断したものだ
クルーエルは心の中で舌打ちを零す
どうすればこの鬱陶しいものを取り除けるか
そればかりが頭の中で右往左往するのだ
きっと今此処で
あれを断ち切ってしまえばよからぬ事が待っているのは事実なのだ
事実でありながら
この体は自由に動けない
ふざけるな
ふざけるな

大鎌を構えたまま、目を細める
迷いがある
当然だ
これはクルーエルが望んでいるものではないからだ
何が悲しくて今大切だと思っている友人に手を出さなければいけないのだろうか
魂だけを狩る大鎌ならまだしも…クルーエルの大鎌は特別なのだ
友人_白銀騎士トラヂェディの体ごと切り裂いてしまう
そして残るのは血にまみれた…

そんなの絶対にいやである
やっと
やっと
見つけたのだから
自分を理解してくれる人を
なのに
こんな形でトラヂェディに刃を向ける事がどれだけ苦痛であるか

断ち切れ

もう一度
言われ
体は動く
真っ直ぐトラヂェディの体を斬ろうと
大きく大鎌を振りかざす

あぁ

誰か

止めて

ヒュッと
風を斬った音がした
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