短編集

□不安だから
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なぁ名無しさんちゃん、何でなんだろうな?

以前から思ってたんだぜ。名無しさんちゃんは、時々気になる表情をするよな。総司にからかわれて赤い顔して怒っている時や、平助と楽しそうに笑っているとき、土方さんと面白そうにいやみの応酬をしているときはいつもの名無しさんちゃんなのに、時々、ふっと無表情になるよな。台所で、治療所で、買い物の途中で、ふとしたときに、無表情になって、瞳には俺が不安になるような暗い影が落ちるよな。

なんでなんだろう?やっと名無しさんちゃんと気持ちを通わせて、幸せの絶頂のはずなのに、その闇が名無しさんちゃんの瞳に現れるたびに、不安になるんだ。まったく情けねぇよな。怖くて聞けねぇんだ。記憶が無いって言うけど、本当なのか?何か隠していて、それからおびえていてそんな目をするのか?俺に知られたくない何かがあるのか?

本当に情けねぇな。

怖くて不安になるから、時々名無しさんちゃんを手荒に抱いちまうんだ。名無しさんちゃんが苦しそうに、時には涙まで流すのに、どうしても止められねぇ。訊くことができねぇ。俺が荒々しく名無しさんちゃんを抱いた後、名無しさんちゃんはいつも謝るよな。あれも、何でなんだ?謝るのは俺のほうなのに。

わかんねぇよ。

でも、だから、名無しさんちゃんは離さねぇ。名無しさんちゃんの瞳からその闇が消えるまで、ずっと傍にいるつもりだ。

だから、俺に時間をくれよ。呆れてどっかにいっちまわねぇでくれよ。



名無しさんちゃんの笑顔のおかげで、俺はこの殺伐とした世界を生きていけるんだから。
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