blue moon -月に祈る-
□nobility of 01
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試験も終わり、後は夏休みを待つばかりになった、7月初旬。
私は放課後いつも遊びに行っている、第二音楽準備室へ向かっていた。
私の通う氷帝学園は東京でも有数のマンモス校で、幼稚舎から高等部まである一大学園だ。
校内の設備投資も素晴らしく、特別教室は教科によるけど、基本的に2つ以上、そして必ず準備室という、サブ教室を伴っている。
噂では、学園経営陣の中に結構なお金持ちがいるとか、教師の実家が実業家なため、寄付金が多く集まっているとか。
まぁ、私には直接関係のない噂だ。
私は中等部からの外部入学で、初等部や幼稚舎からここに通っている子たちとは若干壁がある。
…と思っていたけど、1年も経てばそんなものはただの被害妄想だって判ったし、中々楽しい学園生活を送っている。
そして、この学園の特殊なところにも慣れた。
「やあ、篠宮。久しぶりだね」
第二音楽準備室に居たのは、氷帝学園の七不思議の一、榊先生だ。
何が不思議かっていうと…
「お久しぶりです、榊センセー。この前まで試験期間でしたから、出入り禁止にされたんですよね」
「うむ。学生の本分は勉強だからな。試験は特にそれの表れだ。教師である私が、勉学を妨げる訳にはいかない」
「…教師には見えませんけどね、相変わらず」
「私にはっきりそう言う生徒は稀だな。そこも気に入っている」
榊先生は、中等部の音楽教師だ。
でも、榊先生を見て職業を当てろと言われても、無理だと思う。
私も未だに信じられない。
外国製のオーダーメイドスーツを嫌みなく着こなし、時計やスカーフも高級品。
それが、全くもって似合っている。
てゆーか、教師がスカーフよ?!
男の先生‼︎!
絶対先生には見えない‼︎!
「センセー、そういうこと言うから、教師は仮の姿で実はさる高貴な血筋の御曹司、生涯の伴侶を求めてこの学園へやって来た…なんて、夢みたいな噂されるんですよ??」
そう、何故この格好で1番そぐわないであろう、教師という職業を選んだのか、それが生徒の中でかなり話題になっているのだ。
しかも、割と長い間。
何でも先生が着任してしばらく経った頃から始まり、それが今現在まで続いていて、まだ解明されてないっていう謎。
もう、何かファンタジーだよね。