書斎
□接吻の花
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「シンタローさんっ!」
「?!」
「バイトしてる花屋のお花っす!」
朝。
快晴の空を窓越しに見上げながら、彼を待っていた。
『好き』
そんな気持ちは伝えられるはずもなく。
グダグダと日々を過ごす俺の前に現れた存在。
「シンタローさんは赤が似合うので、薔薇にしたっす!」
「バラっつったって…こんな花束…」
セトは、真っ赤なバラの花束を抱えながらニッコリと微笑んだ。
「お詫び、なんて言ったっすけど…花を選んでる間に、どうやったら喜んでくれるかなーなんて思うようになっちゃって。これ…どうっすか…?」
「す…すげぇ…嬉しい…」
受け取った花束を持って、セトを俺の部屋に案内する。
バラは、18本あった。
『おおっ、つなぎさん!』
「うっす、ええと…」
『エネですよエ・ネ!』
「エネちゃんっすね!こんちはっす」
一通りの挨拶を終えたエネは満足してネットを開き始めた。
俺とセトは、ベッドを背もたれにして床に座った。
「シンタローさん…俺ずっと言いたかったんすけど…」
「おう」
俺の方に座りなおしたセトは、俺と目を合わせる。
「俺、本当はずっとシンタローさんのこと、…その、一目惚れっていうか、あの日からずっと…ずっと想い続けてたんっす。」
真剣な顔つきでそう言う彼の姿は、まるで俺がいつか妄想で描いた光景とよく似ていた。
「ごめんなさい、好きっす…シンタローさん…ごめん…なさい、…」
セトはうつむき、震えた声で小さく呟いた。
「な、泣いてん…のか?」
「泣いてないっ…す…俺ホントに…シンタローさんといるとっ…おかしくなっちゃいそうで…」
「俺も」
「…え……?」
「俺も、好き…だったから。毎日セトのことばっか考えてたし…おかしくなってんのは俺も…だから」
ホッと顔を赤く染めたセトは、俺に顔を近づける。
「ち、近いっ」
「キス、したいっす…いいっすか?」
「っ…聞くな…」
ベッドとセトの間に挟まれた俺は、小さく下を向く。
「愛してる、シンタローさん…っ」
「ん…っ」
キスのしやすいように首を曲げ、目をとじる。
暖かい唇と吐息が混じり合い、愛と優しさに溢れたキスを交わした。
「っ…セト…」
「なん…すか?」
「…すき…っ」
「っ…ダメっすよそんな、歯止め効かなくなる…」
「自制しろバカ…」
「ははっ、そーっすね…今日のところは我慢…っすね」
「きょ…今日のところって…」
カーテンを揺らす小さな風が、
薔薇の花びらを一枚さらった。
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