S h o r t S t o r y
□Eren HPB 小説
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刻々と迫るAM0:00。
花束を抱え急ぎ足で向かうのは、エレンの家だ。
スマホを手に取りメールを開く。
『日付が変わったらバルコニーに出ろ』
それだけを打ち込み送信したと同時に、家の庭に到着した。
いつかエレンが理想の恋人について友達と話していたのを聞いていた。
それは、自分の誕生日になったとき、一番最初に会いに来てくれるような人がいいと言うものだった。
それならそれで、と用意した作戦が今となったのだ。
すると二階のバルコニーの窓が開き、眠たげな目をしたエレンが顔を出す。
「誕生日、だろ」
「り…リヴァイさん…!」
「ほら、受け取れ」
ひょい、と投げた花束をあわあわとキャッチし、顔を真っ赤にする。
庭に咲いた桜が舞い、髪が風になびいた。
すぐに部屋に消えたエレンは、薄手のパーカーを羽織り庭に出る。
そのままぎゅ…とリヴァイを抱き締めれば、ポンポンと頭を撫でられた。
「リヴァイさん…ありがとうございます、こんな…」
「当たり前だ。理想通りの誕生日だろ」
「どっ!どうしてそれを…!」
「馬鹿みてぇにダチと話してただろうが、聞こえちまったんだよ」
「そんな…っ恥ずかしい…!!でもおれ…その、一番最初にリヴァイさんに会えて、嬉しいです…」
「っ…それは良かった」
「それと…二階からリヴァイさんを見つけたとき、桜が舞って…すごく綺麗でした」
おれ、貴方が恋人で良かった。
抱き締めたまま耳元で囁いた声は、微かに震えていた。
泣くんじゃねぇ、とその柔らかい唇へキスを落とす。
「誕生日おめでとう。愛してる、エレン…」
「っ!!…ありがとう…ございます…リヴァイさん…っ」
満天の星空に浮かぶ月は、エレンの瞳によく似ていた。
fin.