S h o r t S t o r y
□猫耳…ですか、兵長。
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秋風も肌寒く感じるこの季節。
資料整理の合間、たまにはと外に出た。
古城前の庭に落ちた木の葉を集め、火をつける。
サラリと舞う火の粉を度々肌に感じながら、透き通る空を見上げた。
あぁ、なんて心地良い時間__。
古城の裏口には小さな黒い猫が一匹。
自身の体温を逃がさないようにと、さらに小さく、まるまっている。
そういえば…こんな所に猫なんて珍しい。
近づいてみれば、はっと目を覚ました小さな黒猫と眼が合う。
まさしく獣だ。
大きく透き通った緑色の瞳。
まるでアイツのような…
スクリ、と立ち上がった小さな黒猫は、まるで逃がさないとでも言うように近づいてきた。
後方で木の葉が燃える音が聞こえる。
手をさしのべれば、指先を小さく舐めた。
痛い…?
舐められた指先を見ると、一点、ぷくりと血が出ていた。
小さな黒猫は、もういなかった。
あぁ、こんなものか。
ただそれだけで、気にもとめていなかったのに。