S h o r t S t o r y
□紅 茶
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コンコン…ガチャッ
「おはようございます!エレンイェー…」
え…? 団長…?
ソファにあるのは二つの影。
いつもは一人で俺が来るのを待っているのに。
その上…テーブルの上にあったのは、
誰かが淹れた紅茶。
多分…団長。
だって兵長はいつも朝俺の紅茶を…
あれ…?
あれ?
嫌だった…?
俺がしつこく淹れに来るのが…
迷惑だった?
だから、止めて欲しいから、わざと、
俺への見せしめとして、…… 。
「すいません…でした…失礼…しました…」
バタン。
裏切られた気分だった。
駄目だ。
もう会えない。
きっとあれが兵長の本当の気持ちだから。
スタスタと自室へ足を速めた。
『エレンっ』
後ろから兵長が追ってることも知らずに。
『おいエレン!』
「はっ…」
気付いた時は兵長はもう真後ろまで来ていた。
でも、
それでも今は早く一人になりたい。
エレンは更に急いだ。
「っ…!!」
『上司に向かってその態度か?エレンよ。』
腕を掴まれ、壁に押し付けられる。
何も言いたくなかったし、
何を言えばいいかも分からない。
「すみま…せん…」
勝手に部屋から出て行ったこと、
上司なのに無視をしたこと、
…嫌々俺の紅茶を飲んでいたこと。
それは絶望ゆえの謝罪だった。
『来い。』
俺はもうされるがままになっていて、
いつの間にか兵長の部屋に連れて来られていた。
団長はもういなかった。
『なぜ急に出て行った?』
少し機嫌が悪い声をしている。
「団長が…いたから…ですあの…俺…その…」
『何だ。はっきり喋れ。』
全く気付いていない。
そんな兵長を見て、俺の想いは涙と一緒に溢れ出した。
「おれ…兵長が…大好きだから…っ…兵長が朝…一番最初に会うのは…おれじゃなきゃ…っ…嫌で…それでっ…」
『…もういい。言うな。悪かった…』
全て悟ったみたいに、
泣きじゃくる俺を優しく抱き締めてくれた。
『…悪かった。だけどな…エレン』
「はい…」
『俺は朝の紅茶はお前のしか飲まねぇ。今日だって…飲んでねぇんだぞ?』
抱き締められたまま、耳元で優しく呟く。
近い…
鼓動が聞こえちゃいそうだ…。
「もう少し…このまま…いい…です…」
『あぁ。……すげぇ心臓の音…』
「あっ…ちがっ…」
『ふっ…俺のだ。バカ…』
あったかい…
気持ちいい…
全部が溶けてしまいそうだった。
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