S h o r t S t o r y


□二 重 人 格
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「あの…どうしてここへ…?」

口調を変えれば人格なんざ
コロコロ変えられるものだ。

『さぁな…なんとなく、だ。』

ふぅん…俺とおんなじだ。
なんとなくだけど…気になる。

「ぁ…おんなじです。俺も…なんとなくですけど…兵長に会いたかった気がしてたんです」

『ほぅ…』

ニヤリ…と効果音が聞こえそうなくらい
怪しく笑う兵長を、俺は見てた。

カシャ…カシャン…

兵長は俺を監禁するための牢の中に入る。

『…お前は俺の班に入る事になった』

ベッドの横にあった
木製の椅子に腰掛けながら、
ゆっくりと呟く。

驚きはしなかった。
だけど、そのためだけに来るだろうか。

「それを報告に…?」

『お前にしては鋭いじゃねぇか。』

しまった…
つい本心が口をついてしまう。

『あの日、お前は俺を憎んでいないと…言ったな。』

「…はい」

あの日の事を根に持っているのは
兵長も同じだったらしい。

『演出として理解している、とも言ったな。…だがなエレンよ…俺の眼は節穴じゃねぇ。』

「お…俺は…っ」

『お前を殴った時のあの顔、見抜けねぇはずがないだろ。』

本心を100%隠してきたエレンにとって
その言葉は生まれて初めてだった。

『隠さず言ってみろ。あの時…俺をどうするつもりだった?』

感情の起伏が全く見えず
内心、少し焦っていた。

ここまできて、嘘をつき通せば
色々とつじつまが合わなくなる。

「あの日俺は…兵長をめちゃくちゃにしてやろうと決心しました。今も変わっていません。」

納得いかないという表情が少しだけ見える。

『めちゃくちゃ…とは何だ。お前は今牢屋で両手を拘束されている。その上武器もねぇ。』

「じゃあ…取って下さい。条件なら何でも飲みます。」

簡単な話だ。
俺は兵長がめちゃくちゃになってる所を
ただ見たいだけだ。

そのためならどんな条件だって飲める。



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