書斎

□やっと会えた
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『お電話ありがとうございます、佐○急便でございます』

「あ、あのそちらの部署に瀬戸さんって人いましゅか…っ」

『あぁ、いますよ。どうかされましたか?』

「なな、なんか家の前で落とし物したみたいだったので…えっと…」

『それは申し訳ございません。本人に取りに行かせますので、都合のいいお時間などありましたら…』

「あ、いっ、いつでも結構です!」

『すみません、では早急に向かわせますのでよろしくお願い致します』

「は、い…」


ガチャン…


「あぁ〜…死ぬかと思った…」


俺はエネが勝手に発信した電話により、ハンカチを渡さなければならなくなった。

でも、逆に考えれば一目惚れしてからずっと想い続けていた人にやっと会えるということだ。

家には俺とエネしか居ない。
あの時の妄想みたいに押し倒されちゃったりしないかなー、なんて変な考えまで出てきてしまう。

『ご主人、髪の毛くらいとかしたらどうですか…腐れニート感丸出しはキツイですよ!』

「う、うるせぇ!別に今日見れたらそれでいいんだし!」

『あれー、なんでもー諦めモードなんですかー?ここはしっかり電話番号くらい…』


ピーンポーン♪


「あっ、あ、え、どうしよ」

『カギ開けるんですよご主人!しっかり!』


ガチャッ


「あ、佐○急便の瀬戸と申します。あの、すみませんでした…わざわざ連絡までして頂いたみたいで」

少し顔を赤らめながら言った青年は、間違いなく俺が一目惚れした人物だった。

そして、これで間違いないと思った。

俺は瀬戸に恋をしたんだ。

「あ、全然いいんで、あの、ハンカチ……あっ」

「…?」

「あの、上にあるから、取ってくるんで、あの…」

『ささ、上がって下さい!外は暑いですし!』

もごもごと言い出せない俺をカバーしてくれたのか、邪魔してくれたのか、エネが笑顔で案内する。


「えっ?今の…」

「あぁ、俺の携帯にいるヤツだから気にしないで」

『ようこそ我らが如月家へ〜!ソファーに座っておいて下さいね!』


ぐちゃぐちゃとうるさいエネをリビングに置き、俺はハンカチを取りに上がった。



『あらあら、緊張してますねー?大丈夫ですよ!ご主人の方がよっぽど緊張してますから!』

「あ、はい…」


バイトが終わった後、まさか一目惚れの相手から電話がくるとは思ってもいなかった。

そして、成りゆきで家にまで上がらせてもらっている。

叶わぬ恋が、動き出したようにも思えた。


「あの…君、どうやって動いてるんっすか?」

『私ですかー?よく解んないんですよねー、まぁ色々ありましてこうなりましたね!』

「へぇ…その、『ご主人』って人は…」

『おっ、興味あります??いやー実はご主人、貴方が配達しに来たときに一目惚…』

「エネ!」

『オアァっ!』

「ったく…すいません何か…」

コーヒーを出しながら瀬戸と呼ばれるこの男の向かいに座る。

緑色のつなぎが印象深い。


「これ、落としたものです。」

きれいに包んであったことに、少し驚いた様子を見せた。

「迷惑かけちゃってすいません…あ、もしよかったら、俺の働いてる花屋に来てほしいっす!お詫びがしたくて…」

「…花屋…?あぁ俺、そんな大丈夫なんで。大した事じゃないし」

外に出なければいけなくなる、そんな思考を巡らせながら断りをいれる。

背中は緊張で汗が滲んでいた。


「あ…美味しい」

コーヒーを一口飲んだ瀬戸は、緊張が解けたように優しく笑った。

俺、この味大好きです、と言って。


「そ…そうか、よかった」

「……お名前、なんて言うんすか?あ、俺は瀬戸。瀬戸幸助っす」

「き…如月 伸太郎。」

「シンタローさんっすか!いい名前っすね!」


小さな話題をちらほらと話しているうちに、だいぶ打ち解けてきた。

もうなんのために家に居るかも解らないくらい。


「シンタローさんて、綺麗な顔っすね…初めて荷物を届けに行った日、思わず見とれちゃったっすよ」

「そ、そんなコトねぇ…」

『ありますありますー!ご主人もつなぎさんに見とれてましたよ!』

「えっ、そうなんすかシンタローさん…」

「いやっ、ちが…エネお前……っ」

「なんか嬉しいっす…ドキドキするっすね」

「ど、ド…?!」

俺の手をとり、自分の胸に手をあてたセトはゆっくりと目を閉じる。


「ほら、こんなに……なんでっすかね…」

「しし、知らね…よ…発作じゃねぇの?」

セトが触れた腕が、熱い。
俺だってドキドキしてる。
こんなにも近くにいる、そう思うだけで。


「…シンタローさん、明日、バイト終わったら来てもいいっすか?花、持ってくるっす」

「…っ//……あぁ、いいけど、…」

長いことすいません、そう言ったセトはハンカチを机に置いて玄関に消えた。


「セトっ、これ…ハンカチ」

「持っててもらえるっすか、それ。また会いに来る約束のハンカチっす!」

「っ…分かった…」


『Seto』と刺繍されたハンカチを握り、家を出た彼を見送った。














やっと…やっと会えた。








c o n t i n u e ..




『予想通りgdgd過ぎて…その時点でもう諦めた方が良いでしょう?』

gdgdすみません。
本当に。
次にはしっかり両想いになってます。
文才ないのでお許しください泣

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