書斎
□俺とバイトと出会いと
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「おはよう諸君!今日は君たちの新しい仲間を紹介する!瀬戸君だ」
「おはようございます!瀬戸っていいます!配達のバイトは初めてなんすけど、宜しくお願いするっす!」
俺は花屋のバイトと並行して宅配便のバイトをすることにした。
アジトでは三人で暮らしていて、食費だの何だのは主にバイトで補っている。
「瀬戸君、早速仕事だ。」
「うっす!」
ささっと荷物を運び出し、バイクに詰め込む。
運転免許がない俺は、小さな荷物をバイクで配達する仕事だった。
「じゃ、行ってくるっす!」
「はいよ、頑張りなさい」
店長は手を降りながら見送る。
優しそうな人だと感じた。
「一軒目は…っと」…
ピーンポーン♪
「………あれ、いない?」
不在届けを書きだそうとペンを握りしめた時だ。
「……は、い」
「あっ、宅配便っす!」
……………
初めてのお客さんって緊張するな…
そんな事を考えていたら、玄関の扉が開いた。
真っ黒な髪に黒いTシャツ。
赤いパーカーが印象的な人だ。
「………」
「あっ…えっとここに印鑑貰えますか!」
「………ん」
「ありがとうございます、えと重いので気をつけてお持ち下さい」
よし、マニュアル通り。
…と、荷物を渡そうとした。
「……っ、」
「あっ中まで運ぶっすか?」
「…え……あ……じゃ頼む…」
シャイなのかな、なんて思ったけど、俺が言えることじゃない。
実は緊張しすぎて目も合わせられていないんだ。
マニュアルには確か…
『目を合わせてニッコリ笑顔で受け渡しすること!』
あぁ…できてないな、俺。
ちゃんとしないと…
「ここで大丈夫っすか?」
玄関先まで運び、ニッコリ笑顔を作ってみる。
「……っ…どーも…」
えっ………嘘、なにこれ…この感じ…
「え…あ、じゃ…ありがとうございました!」
「?………あ、あぁ…」
スタスタと道端のバイクに寄り、胸に手を当ててみる。
バクバク…してんだけど…
そう、俺はマニュアル通りに彼の目を見た。
そしたらその瞬間、なんか急に身体が熱くなって、心臓の音が指先にまで伝わった。
吸い寄せられそうになって、慌てて逃げてきてしまった。
こんな気持ち初めてだ…
一目惚れ?
いや、違う…よな、あの人男だし。
じゃあ何で、
何でこんなにドキドキしてるんだろう。
熱い身体を冷やすように、二軒目に向かいバイクを跳ばした。
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