全てを貴方に。

□フリージア
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たかが小娘のために心が動くことなどないはずだ。

最近の自分はどうかしていると普段通りに眉間のしわを一層深いものにした。

授業が終わり片付けをしていると誰か残っているのが見えた。

ミラ・・・だ。

「スネイプ先生」

「なんだお前か」

「ありがとうございました」

深々とミラがおじぎをして我輩のところにかけよると『先生』と耳を貸せと言っている素振りをした。

同級生たちより少し年上とは言え10代だ。

30代の我輩のことなどおじさん扱いされても仕方ないような年齢だ。

そんな10代の娘にドキドキなどするものか。

わざわざ彼女のためにかがむのも癪に障るような気がした。

というよりも彼女に負けてしまうような気がしてしまったのかもしれない。

ここで負けてしまっては一気に自分が劣勢になってしまったような気分だ。

「・・・なんだ」

わざと一層不快そうな顔をしたがミラは手招きしている。

仕方なくため息をつきながらかがむと彼女は我輩の耳に手を当てる素振りをした。

教室に二人しかいないというのになんなのだ?

すると彼女は耳に手を当てるふりをして突然―――――




我輩の頬にキスをした。

突然の出来事に呆気にとられていると満足げにミラはニコニコとして

「スネイプ先生、大好き」

耳元でそう囁くとミラはそのまま逃げていった。

我輩は一人、地下の教室に取り残された。

色々な思いを巡らせた。

今まで人に嫌われることには慣れていた。

しかし今回のようなことは初めてだった。

いい年をして小娘に振り回されている自分に驚いた。
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