真面目な短編小説

□雪国心中
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 私は彼女の写真を見つめて泣いている。彼女が死んだのは完全に私のせいであり、全ての責任は私が取るべきだ。

 しかし、彼女の両親は既に亡くなっている。彼女のたった一人の肉親は弟だけである。
「お前が、お前が姉さんと付き合ったから悪いんだ。お前のせいで死んだんだ。いくら謝りにきても俺は絶対にお前を許さない!」
 何度も何度も謝りに行ったのだが、こんな具合に門前払いを食らっている。
 
 なぜ、お墓の前に行かないのかと聞かれれば、まだ冬だからと答えるだろう。雪国の場合、春にならないと雪のせいで埋葬が出来ないので遺骨は遺族の家に置かれる事になる。
「ごめん、美雪」
 私は彼女の名前を呟いた。写真の中で笑っている彼女の顔を見ていると、今にも部屋のドアが開き、ただいまと彼女が帰ってきそうな気がする。
 私の両親が私達の結婚に反対していた。何故なら私はこの地方で古く格式のある家の出あり、結婚相手が決められていた。私は反対を押し切って彼女と付き合ったのが結婚は絶対に許さないと釘をされた。そして同棲をダラダラと続けていたのである。
 ある寒い冬の日。彼女が温泉へ行こうと言い出した。私も仕事があまり忙しくない時期だったので、一日も使っていなかった有給を使う事にした。
 彼女が選んだのは湯治に使われる事が多い山の上の温泉宿だった。そこは毎年、四メートルを超える雪が降る豪雪地帯である。どうして、そんな所を選んだのかは彼女に聞く事が出来なかった。そして彼女の荷物に何が入っていたかも、私は知る事が出来なかった。
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