貧乏少女

□貧乏少女 その11
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 パトカーに揺られて着いたのは……何とテレビ局だったのです。
「新しいボランティアだ。カメラに映れ」
 私は言われる通りに動かないとダメでした。
 ゆっくり、ゆっくりと歩きます。何故ならお腹の中が白い液体でいっぱいだからです。
「そこに立て、お尻をカメラに向けろ。あと、ここからは私じゃなくて、この人がやるから」
 警官はテレビ局の駐車場の真ん中まで私を連れてくると離れた。
 そして顔を隠した女が1人近づいてきたのです。その後にマイクを持ったリクルートスーツを着た人も来ました。
 マイクの方はアナウンサーなのか? 顔を隠している方は誰なのですか?
「生放送5秒前。4、3、2」
 誰か言った。私のお尻の方から聞こえました。生放送って何ですか?
「夜遅くに緊急放送です。新しい法律による罰で1番重い罰が初めて行われようとしています」
 え、私がそうなのか? まさか、陽性反応が出たのでは? まさか、まさか、まさか。
「未成年のため、プライバシー保護しておりますので顔はお見せできません」
「この犯罪者は危ない薬をこの国に広めた罪として、この法律の極罰になっています」
「では、執行人さん。よろしくお願いします。犯罪者はここで逃げると国外追放ですよ。そのままの格好で」
 極罰。この国は死刑がない。その代わり、国外追放と奴隷扱いがある。
 だけど、この新しい法律では違うはずです。国外追放なら放り出されるし、奴隷なら焼印をされるはずです。
 違うことをされるはずです。
『尻の穴がよく見えるように広げろ』
 機械みたいな声が聞こえてきた。私の体は勝手に動くのでした。
「これは首輪の新しい効果です。執行人からの命令は絶対」
 アナウンサーが説明していく。もしかして私は、未成年者への見せしめなのか?
「この犯罪者も結構酷いことされていますね。棒が刺さっています」
『では、まずコレを抜くぞ』
 執行人が警棒を抜いたのです。お腹の中の白い物が全て噴き出した!
「うわっ! これは一体何回されたのでしょうか!」
 アナウンサーが実況するので私の羞恥心は加速していくのです。もう光速になっているかもしれません。
「執行人は梁型を手に取りました。犯罪者の処女を奪うのでしょう」
 私は思わず、叫びました。
「お願い、止めてえええええええ」
『ダメだ』
 ズブリと梁型が刺さりました。痛みが私を支配します。
 グスグスと泣きました。
「これで緊急放送を終わります。この映像は明日の朝、昼、夜のニュースでも放送されます」

 警官お姉さんに運ばれて家に戻った。
「お前は、きっと濡れ衣を着せられたのだろう。ボランティアは少なくしてやる」
 お姉さんは帰ってしまいました。
 私は1人で泣いたのです。

 次の日も、そのまた次の日も何もなかった。
 私はずっと家に引きこもっていました。
 夏休みの最終日。電話が鳴って、相手は闇の宅配サービスでした。
『もしもし、いやー災難だったね。でも、君が来ないから忙しくて電話かけるのが今日になってしまった』
「バイトには行けません」
『バイトじゃないよ。全裸で届けたら、目立つでしょ』
 私は何も答えない。
『そろそろ学校始まるし、どうしてるかなって。学校に出たら、壮絶なイジメにあうでしょ』
 何も答えない。学校には行かないつもりでいた。
『まあ、刑期が終わったら、またバイトに来てね』
 電話は切れた。こうなったのは、彼女のせいではないか?
 そう思いながら、眠った。

 学校が始まった。気だるい体を動かして鞄を持つ。学校には行きたくないのに、ボランティアがそうさせた。
 その代わり、鎖は外れている。変な腕輪と足輪を付けているみたいだ。
 周りの視線や嘲笑う声を聞きながら、通学路歩く。そして学校に着くと先生に呼び出された。
 放送室。また、カメラが用意されて、私を映している。
「ちなみに、学校の中だけの配信だから、モザイクはかからないわよ。さあ、その文章を読みなさい」
 先生に言われた通りに動く。私は恥ずかしいけど、渡された髪を読んだ。
 逆らうと、大変なことになる。
「皆様……楽しく夏休みを過ごすことが出来ましたか」
 声が震える。頑張って読んで、最後の挨拶。
「私のようにならないよう、注意して二学期も過ごしてください」
 そして、私は教室に戻された。
 私の席は教室の1番前の真ん中になっていた。そして私の周りには、空間が開いていた。
 避けられている。当たり前か。私は犯罪者だ。
 後ろから蔑む視線が向けられる。
「最悪、犯罪者と同じクラスなんて」
「さっきの映像もイライラしたわ」
「何かしたいわ。でも、手は汚したない」
「あの人がやってくれるでしょう?」
「それもそうね」
 会話も聞こえる。これから1か月、私はどうなるのか。
 今日は諸連絡で終わり、帰る時は玄関から校門までが人で埋まった。まるでマラソンの声援を送る人のようだ。
 その真ん中を私だけが歩く。シャッター音、笑う声が響き渡った。

 学校2日目。校門の前に着くと、竹刀を持った人が立っている。
「私の名は、天罰竹刀。この学園には犯罪者がいるのは許せない。7日間の天罰を与える」
 昨日言ってた、あの人なのか?
「さあ、アイツを押さえろ」
 2人の生徒が動いて、私の腕を掴み、彼女に背を向ける体勢になる。そして、後ろの穴に衝撃が走った。
 竹刀がズブリと刺さったのだ。
「このまま、玄関前に連れていく」
 私は竹刀が刺さったまま歩く。お辞儀をしたまま歩いているみたいだ。恥ずかしい。
 シャッター音と笑い声が響く。学校内で撮るなら、モザイクが掛からないせいで、私の姿が学校内で拡散される。
 竹刀が深く入らないように私は押される方向に歩くしかなかった。

 神殿ような作りの玄関。そこにある柱に抱き付けと言われた。私は従うしかない。
 柱に腕を回すと、腕輪が柱にくっ付いて取れなくなった。
「それが鎖の代わりに着いた機能だ。今日はこのまま放置する」
 私の耳には、イヤホンが付けられた。
「授業はそれで聞こえる。遅れる心配はない」
 天罰さんは校舎へ入っていった。
 残された私は生徒達からジロジロ見られ、日光に晒された。


貧乏少女 その11終わり その12に続く

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