貧乏少女

□貧乏少女
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 私の名前は銭子。女鹿沢国で暮らしているのです。
 この国にいるのは女だけ。ふたなりという男性のアレを持った女もいますが。
 もちろん、私は普通の女の子ですよ。ちょっと貧相な体ですけども。
「ああ、今月もギリギリだよ。奨学金制度って大変」
 私は学生のです。奨学金だけで生活しています。
 バイトはできません。何故なら、学校の決まりで出来ないのです。
 月2万円のボロボロで四畳半しかないアパート裸族荘で生活しています。
 持っている服は制服と私服が1着だけ。あと、防寒具のコートなど。
 下着は上下で2枚づつ。
 かつかつの生活です。
 今日は学校が休みなのですが、昨日の雨で制服が濡れてしまいました。
 そして、今日も雨です。制服を乾かしにコインランドリーへ行かないといけない。
 普段着に身を包み、意気揚々と家を出ました。
 すると、車が通って、水溜りのが私にかかったのです。
 普段着もビショビショになってしまいました。
「最悪……」
 私は自分の部屋に戻りました。着る服が無くなってしまったからです。
 2着ある下着、制服、普段着。全部ビショビショに濡れている。
 コートだけを着て行くのは真冬なら大丈夫でしょうが、今は梅雨です。
 着れる物が無いかと探してみました。見付かったのは、半透明の雨合羽でした。
「え、これで……大丈夫なの?」
 でも、服を乾かさないと裸で学校へ行く事になる。
「女は度胸!」
 私は半透明の雨合羽だけを着て、家を出た。
 幸いな事に土砂降りの雨で外には人がいなかったのです。
 早くコインランドリーに行かないと。

 いつも歩く道なのですが、いつもと違うのは私がほとんど裸だという事でした。
 通気性の悪い合羽の中は、汗で蒸れてくるのです。
 心臓がすごく速く動いています。今までは、ありえない事でした。
 コインランドリーにやっと着きました。
 その中に人はいませんでした。
 私は服を洗濯機に放り込みます。そしてスイッチを入れたのです。
 ゴウンゴウンと音を立てて洗濯機が動き出しました。
 あと、30分はここ居なければなりません。
 雨合羽の中はまるでサウナスーツのようになってきました。
 あと、洗濯機が20分。乾燥機が30分ある事を思い出しました。
 あ、洗濯物はゴミ袋に入れて運んでいるので絶対に濡れませんよ。

 洗濯機が止まります。私は乾燥機に入れてスイッチを押しました。
 あと、30分だけ誰も来なかったら私の勝ちです。
 誰にも裸を見られずに済みます。
 すると、誰かが入って来ました。
「雨が凄いですねー」
 話しかけてきた人の格好を見て驚きました。彼女は、何と水着を着ていたのです。
「え、ええ」 
 私は逃げる事も出来ずに、手で大事なところを隠すだけでした。
「変な格好はお互い様でしょ?」
 そう言って彼女は水着を脱いでしまったのです。持ってきた洗濯物を一緒に洗濯機に入れてしまいました。
「貴女も脱いだら、どうなの? 暑いでしょ」
「はい、そうですね」
 私は言われるがままに脱ぎました。汗で蒸れていたので匂いが気になります。
「貴女の名前は? あたしは水木。水着が普段着の水木よ」
「私は、貧乏な銭子です。裸族荘に住んでいます」
「あら、私もよ」
 運命的な出会いをして私は彼女と仲良くなりました。
 裸の付き合いってすごいですね。
 その内、私の物を入れた洗濯機が止まりました。
「お先に失礼します」
 私は洗濯物をゴミ袋に入れて、コインランドリーを出ました。
 雨が体に当たり、汗が流れ落ちていきます。
 コインランドリーと家の中間で私は気が付きました。雨合羽を着ていないのです。
 取りに戻るのも、大変なので私は家まで走りました。


 貧乏少女その1終わり

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