人外いぢめ 斎藤空

□ふたなり空 日常編
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 体が怠い。柔らかいベッドの上で目を覚ますと、見慣れた自分の部屋だった。
 戻ってこれた。しかし、エミの事を思い出すと涙が出てくる。
「夢だったのかな……」
 スマホで日時を確認するとゴールデンウイークの3日目だった。
 あの不思議なジャングルで1週間ほど過ごしたはずなのに、時間が経っていない。
 そして私は全裸だった。
 股間に違和感がある。そこにはギンギンに大きくなったアレ(男性器)があった。
「夢じゃない!?」
 どうすればいいのだろう。私は途方に暮れた。
 そこに電話がかかってきたのだ。私の友達である、鬼子ちゃんからだった。
「おはよう、どうしたの?」
『電話が繋がらなかったから、心配でさ』
 ジャングルに行って、アレが生えたなんて言えない。
「ちょっと旅行に行ってたんだよ。電波が届かない山奥に」
『何をしに行ったんだ? 今から空の家に行っていいか、暇なんだ』
「う、うん」
『じゃあ、今から行くぜ』
 電話は切れた。どうやって、アレを隠そうか?
 とりあえずシャワーを浴びよう。栗の花の匂いがする。つまり子種の匂いだ。
 裸のまま浴室に向かい、シャワーを浴びると、タオルも巻かずに廊下へ出てしまった。
 すると、チャイムがなった。この時間に訪ねてくるのは、鬼子だけだろう。
「おーい、空。どうせ、親いないんだろ? 入るぞ」
 春日部市に住むあの有名な幼稚園児の家を思い出して欲しい。玄関のすぐ近くに階段がある。
 浴室から階段に向かっていた私は、タオルすら持っていない。生まれたままの姿で鬼子を迎え入れるしかなかった。
 いや、私の体にはアレが増えていたのだ。しかも、ギンギンと天へ伸びている。ここにあるよと主張している。
「あ、風呂に入ってたのか――――そ、それって?」
 鬼子は私のアレを凝視している。そうだ、女にはない物なのだから。
「女になりすましていた変態め!?」
 鬼子は顔を真っ赤にしていた。きちんと靴を脱いでから、私に近づいてくる。
「この変態!!」
 まるでサッカーボールを蹴るように、私のアレを蹴ってきたのだ。
 私に生えているアレはバットだけではない。ツーボールも着いているのである。
 彼女の足はボールに直撃した。その衝撃は、ボールから恥骨へ伝わり、そして子宮に響き渡ったのだ。
 男女両方の痛みを一気に受けた私は、後ろへ向かって倒れた。
 体から出る体液が全て出たような感覚に襲われたのである。
「そ、空がお、おと、ととととと男だったなんて」
 鬼子が混乱しているがそれどころではないのだ。痛みが私を支配する。
「あれ、でも一緒に温泉に入っているよな? 女子高に通っているし、着替えも一緒にしている」
 鬼子は冷静さを取り戻してきた。
「あ、ごめん。ホントに大丈夫か?」
 やっと鬼子が冷静さを取り戻したようだ。
 私は頑張って、説明した。彼女は信じられないという顔をしたが、アレが付いている事で納得したらしい。
「とりあえず、姉貴の友達に聞いてみるぜ」
 彼女は電話を掛けている。
『な、なに、その面白い状況! 私がやろうとしている事じゃないか!』
 電話から声が漏れている。
『車出すから、住所を言え』
 鬼子が私の家の住所を言ったところで電話が切れたらしい。
「姉貴の友達は百合さんと言って、女同士で子供を作る研究をしているんだ」
 とんでもない研究をしている人がいるんだな。
「それで空のなっている状況を作り出そうとしているらしいから、実験体になってくれだって」
「治るの?」
「それは分からないってさ。でも、バイト代は出るって」
「もちろんやるよ」
 車がやってきた。何て行動が早い。
「鬼子ちゃーん。そこで倒れている彼女でいいんだよね?」
 私は足腰が立たないくらい痛かったので百合さんに全裸のまま抱えられて車に乗った。
 服がない。その事に気が付いたのは、大学の研究所に着いた時だった。
 
 百合さんによる人体実験が始まったのだ。


ふたなり空 日常編終わり

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