空想部屋

□転校生戸塚くん
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俺、戸塚司は親の離婚で転校する羽目になった可哀想な高校2年生。

父親は神代グループの中でもトップを争う大企業の社長で、つい最近まで俺は何不自由なくセレブ高校生として人生を謳歌していた。

しかし、父親に何人もの愛人がいたことが発覚、母親が発狂し離婚。 
そこから俺の人生は暗転した。
負けず嫌いな母親は慰謝料を突き返し俺を連れて家を出てしまったのだ。

そこそこ勉強も出来た俺は有名な私立の進学校に通っていたが、学費が足りなく転校を余儀なくされた。

そして一般人が通うこんな変哲もない高校に通う羽目になったのだ。






「よろしくな、えっと、戸塚!」

自己紹介が終わり案内された席に着くと隣の席の女子学生が声をかけてきた。

言葉遣いが悪いが顔は凄く可愛い。
つい見とれていると、後ろの席の奴に椅子を蹴られた。

振り向くと爽やかなイケメンがニコニコ笑っていた。

なんだコイツ……?

「何やってんだよ 甘雨!転校生を苛めるなよ!」

戸塚が怪訝な顔をしていると可愛い女子学生が庇ってくれる。

天使光臨!自然と顔がにやける。
 
しかしそんな気持ちも次の言葉ですぐに下降した。

「えー?だって后、コイツ后のこと女だと思ってるぜ?ちょーキモいんだけど!」

甘雨とかいう奴の一言で一気にクラス中がどっと笑いに包まれた。

「おい、流石にそれはないだろ甘雨?天神、男子の制服着てるじゃんか、な?戸塚」

笑いながら1人のクラスメートが戸塚に話しかけてきた。

戸塚は驚いて后の全身を眺めた。

確かに男だ。なんたる失態!

その様子にクラスメートが固まる気配がした。

「……え、まさか本当に女だと思ってたの?」

みんな引いている。

転校初日 痛い人扱いはゴメンだ。

「ま、まさか、気付いてたよ!」

急いで否定したが、遅かった。
みんな、仕方ないよとか天神は女装コンの王者だからとかいって戸塚を慰めてきた。

とんだ赤っ恥だ!

戸塚は諸悪の根源の后を睨んだが逆に睨み返された。そして

「まじ、最悪!」

と戸塚を蔑むように言い捨てた。


コイツ、ムカつく!

一度見とれてしまった所為か過剰に頭に血が上っていく。

が、またガンと椅子を蹴られた。

振り返ると案の定、ニコニコ笑っている甘雨と目が合った。

そして甘雨の唇がある短い言葉の形に動く。


「シ・ネ」



何なのコイツ!


勿論、口パクなので誰も気づかなかったが、微かに瞳が暗く淀んでいた。明らかに殺気を送られた気がする。


あーもう嫌だ

転校初日早々、痛い人キャラ決定だし

なんかへんな奴に目つけられたし

女顔の気に食わない奴に見下されるし


だからこんな庶民だらけの高校なんて来たくなかったんだ!

戸塚が心の中で文句を言っていると
通常の様子に戻った教室にドアをノックする音が響いた。

先生がすぐに気付いてドアの方に移動する

「何?今、ホームルーム中…………いやぁー!格好いいー!」

先生がドアを開けた途端、黄色い声をあげた。

その後、クラスの女子もキャーキャー騒ぎ出した。

何事かと思い戸塚は女子たちの視線の先にいる男を覗きこんだ。
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