空想部屋

□悪夢にサヨナラ
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夢を見た。


燃えさかる住み慣れた我が家と

苦しみ悶える両親の影

そして……どこからか聞こえるのは兄に助けを求め続ける妹の泣き声

何も出来ず、ただ見ているしか出来なかった。

自分の無力さも、その光景を満足そうに眺めている悪魔も

憎くて仕方なかった。


そして、全て消えた。

家族も 家も 未来も

そう、全て…………あっという間に……




目覚めると晴明は酷く汗をかいていた。
乱れた息を整え、そっと隣を見るとすぐ傍に后がいる。

后は気持ちよさそうに眠りについていた。

それだけで心が落ち着く。

よく見ると衣服を着ていない、肩に触れると少し冷えていた。
晴明は服を着せずに眠りにおちたことに後悔しながら后を毛布ごと抱きしめた。

「ん……晴明?」

「すいません。起こしちゃいましたか?」

寒いのか后は晴明の胸に自ら潜り込んできた

「……いま、何時?」

「……4時です。もう少し寝てていいですよ」

「…うん。……晴明?」

「…はい」

「…夢を見たんだ」

「……はい」

「悲しい夢だったんだ。」

「…………」

「俺の大切な人が、凄く傷付いている夢………」

后はそっと晴明の胸から顔をあげて、そのまま晴明を見つめる。

「泣いてる……」

そうして晴明の頬に優しく触れた。

「晴明、覚えてる?」

「……え?」

「前に俺が言ったこと、お前の望むこと、叶えるって……」

「……后様、それはもう」

「俺が、幸せにするよお前のこと」

必ず、と小さな声で后は晴明に告げ、また晴明の胸に潜り込む。


本当に……適わないなと思う。

真っ直ぐで、揺らがない心。

他人の痛みを躊躇うことなく包み込む強さ

簡単に出来ることではない。

それでも彼は実際、癒やしてしまうのだ。

そんなの……惹かれるなというほうが無理だろう

「……ってか寒い、脱がしたまま寝てんじゃねーよバカ側近」

いきなり口が悪くなったのは照れ隠しだろうか、首が真っ赤に染まっている。

「すいません。今すぐ暖めてあげますから、許して下さい。」

晴明は赤くなってる后の首にキスをする。

「晴明……お前さ、昨日何回したか覚えてるか?」

后は呆れた様子で溜め息をついた。

「当たり前でしょう。5回です」

忘れるわけない。勿体ない。

「ならいいだろ、頼むから寝かせてくれ……」

なんだかいきなり面倒くさそうだ。
こういう所が天然の魔性なのだ。

「分かりました。寝ましょうか…」

晴明は后の腰に手を伸ばした。

「寝るの意味ちげーから!」

流石に目が覚めたのかキレの良いツッコミを入れられた。

「后様、私の望みを叶えてくれるんじゃないんですか?」

「…………」

睨まれたが、気にしない。

晴明はそのまま手を前に滑らせる

すると諦めたのか、いやキレたのか
后はいきなり晴明の上に乗っかり一言告げた
 


「そんなにヤリたいなら先にイかせてプライド傷つけてやろうか(笑)?」



魔性降臨!!笑顔が怖い。



「……ほう、出来るものならどうぞ」


しかし残念ながら魔性スイッチ入った后に勝ったことは一度もない。


でもいい。幸せだから。




后様に出会うまでずっと
憎しみだけで生きてきた。

また笑う日がくるなんて

誰かと抱き合う日がくるなんて

思わなかった。


いつも悪夢を見た後は1人
朝まで自分を攻め続けていた。

后様に出会うまでずっと……


「何、笑ってんの?その余裕いつまで持つのかね」

そう言って后は晴明を口に含んだ。



后様………



少し手加減して下さい!


晴明は心の中で叫んだ




end

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