空想部屋

□幼なじみの憂鬱
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后と晴明様が付き合い始めた。

なんか怪しいなぁとは思っていたけれど、まさかこんな最悪なことになるなんて思わなかった。

だってあの后だぜ?
あんな分かり易い晴明様の好き好きアピールを嫌がらせやストレス発散だと言い切る鈍感な后がなぜ今さら?

后は彼女だっていたことあるし、自分に言い寄ってくる男たちは片っ端から断っていた(偶に蹴り飛ばしていたこともある)
だから驚いたのは甘雨だけではなかった。
霧砂と三つ子は呆れていたし
破と俺は一瞬殺意を覚えた(破は本当に一瞬ですぐに武器もしまっていた)
華は固まっていた。
残りの奴らは何時も通り。

しかし意外にも第二皇子だけ何故か冷静だった。凄い睨んではいたが……

後から后から必死で説得したと聞いた。
実際、もう第二皇子より后の方がはるかに強いのだから、いくら反対してもどうにもならないのだが、かなり駄々をこねたらしい。(主神言の駄々なんて想像しただけで恐ろしい)

いっそ第二皇子が晴明様を殺してくれたら良かったのに。


「創造主に向かって恐ろしいこと考えないように!」

甘雨がダークな事を考えていたとき晴明が背後から甘酒を飲みながら現れた。

「読んだんですか、俺の心?」
いつも通り甘雨は笑ってみせた。

「やめなさい余裕ぶるのは!……后様が心配してましたよ。甘雨が元気ないって、余裕ぶる余裕があるなら后様の心を気遣いなさい。」

「じゃー俺が元気になるように別れて下さいよ后と」

「嫌ですよ、后様が泣いちゃうじゃ
ないですか」

晴明は甘雨とは違って本当の余裕の笑みを浮かべた。

「大丈夫ですよ、俺が慰めますから」

イラっとして嫌みを言ってやった。もう創造主とかどうでもいい。下らない。

「バカですねー甘雨。あなたには無理でしょう?あなたが一番解っているんじゃないですか?」

晴明が甘雨の胸に人差し指を当てる。


やめろ!


「だってあなたは后様の」


やめろ、言うな!


「親友なんだから」


ー!!!!


甘雨は一瞬我を忘れて晴明の胸ぐらを掴んで殴ろうとしていた。

「なんで止めるんですか?
いいですよ、殴って。それで后様を諦めてくれるなら安いものです」

マジうぜー!!

甘雨は舌打ちしながら半分突き放すように晴明を放した。

「残念ですねー。はやく后様は私の物だと認めて欲しかったんですけどねー」

誰が認めるか!

甘雨だって馬鹿じゃない。
解っているのだ。
后が自分のことを親友以上に想ってはくれないこと。
それは今だけではなく、これからずっとそうだということも……

そして甘雨も

そんな后を裏切れないのだ。

本当に下らない。親友なんて。

家族や恋人以上の位置になることはないのだから……。それでも俺は、

「晴明様、俺、主神言よりしつこいんですよ、后に関しては!」

晴明はそんな甘雨を鼻で笑いながら一言告げた。

「そうですか、それより!今日の夜は后様の護衛は結構です。他の式神にもそう伝えて下さいね」

晴明は2本目の甘酒を開けて飲み始めた。

「今日は一晩中私が側にいますので!勿論、恋人として。……意味、解りますよね、青龍甘雨?」

マジで殺してしまいたい。(無理だけど)

「くれぐれも邪魔しないように」

地獄に落ちてしまえ!

甘雨はそれでもいつもの笑顔に戻り、たった一言だけ言い返した。

「分かりました晴明様。あぁ因みにですけど后のファーストキスは俺が頂いてるんで!そっちは晴明様に譲ってあげます。」

思いきり負け惜しみだ。

しかし晴明は甘酒缶を口にしたまま動かなくなってしまった。

そんな晴明に少しだけ満足して甘雨はその場を去った。


なぁ…后

お前が望むならいつまでも親友でいてやるよ…

でも、俺の心だけは自由でいさせて欲しいんだ。

きっと叶うことはないだろうし、

きっと后は知ることもないだろうけど

でも、俺はまだ

まだ、お前を好きでいたいから。


end

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