夏目 壱辻屋 [dream]

□17歳 冬
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放課後、いつものように木月は夏目と一緒に学校を出た。休み時間のことがあったため、木月と夏目が二人で歩いていると夏目は友達にからかわれていた。

木月と夏目はいつもの通り星笛の後をついて歩いていたが、途中から知らない道に入った。しかも、いつものような林道ではなく、人道だ。一体何処へ行くつもりだろう。夏目も同じことを思っているのか、不信そうな顔をしていた。
木月が不思議に思っていると、星笛は一つの家に入っていった。洗濯ものが干してあったり庭がよく手入れされていたり、明らかに誰かが住んでいる家だ。表札には『藤原』と書いてあるのが見えた。

「誰かの家みたいだね?」
「・・・俺んちだ。」
「夏目の!?」

何故星笛が夏目の家を知っているのか、何故夏目の家の表札が『夏目』ではなく『藤原』なのか。分からないことだらけで、木月は何から質問したら良いのか分からなくなった。困った木月が、玄関に立って手招きしている星笛と、それを睨みながら門の前から動かない夏目を交互に見ていると、玄関が開いて中から優しそうな女性が出てきた。その女性が星笛の横をスッと通り過ぎたとき、木月は改めて、星笛の存在の奇妙さを実感した。

「貴志君、お帰りなさい。まあ、可愛いお客さまね!どうぞ入って、ゆっくりしていってね。」
「いや、塔子さん、あの・・・。」
「駄目よ貴志君、こんな寒い中女の子待たせちゃあ。私はちょっと買い物に出てくるから、ねえ、昨日開けた紅茶をお出ししておいて。貴方、身体が冷えてしまったでしょう?」
「あ、ありがとうございます。私、木月佐和と言います。お邪魔、します・・・。」
「佐和ちゃんね。駅前で美味しいケーキを買ってくるから。ちょっと待っていてね!」

優しそうでも、さすがお母さん世代の女性である。木月が遠慮する余裕もないままに、塔子さんという女性は買い物に出かけてしまった。呆然とする二人に、星笛は玄関からもう一度手招きをしている。

「せっかくだから、お邪魔しようかな。」
「ああ、上がってくれ。」
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