進撃 第壱扉 [dream]

□守りたいと言えない
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「と、とりあえず私、エルヴィン団長とお話してみます...。」
「当たり前だ。そのくらいのけじめはつけろ。」
「すみません・・・。
でもそれとはまた別に、壁外調査には行かせてください。きっとお役に立てます。」

マヤは凛とした表情で言う。
マヤのことだ。
正義感をふりかざしていやがるのだろう。

「お前のご立派な正義感なんてクソだ。
偽善はすぐに折れる。そんな脆いものは要らない。」

大事な奴だからと言って、甘やかすわけにはいかない。
リヴァイはリヴァイなりに、真面目に厳しく説得した。

しかしマヤは堪えていない様子だ。

「それにな。」

「俺は何度も壁外調査に行って、その度に部下が死ぬのを見てきた。
俺の判断で死なせるんだ。
お前が壁外調査に行く以上、お前にも命令を出さざるをえない時もあるだろう。
俺は、お前のことをそういう風に失いたくはない。」

リヴァイはめったに人に打ち明けない思いを、マヤに吐露した。
ここまで言えばマヤも諦めるだろうという目論見も込めて。
しかし、マヤは意外な言葉を口にした。

「お気持ちはわかります。私も同じです。
病院では、私の判断や器具の操り方ひとつで、患者は亡くなってしまいます。私が殺すんです。」

それはお前が殺すことにはならない。
それ以上にお前は患者を救っているんだろう。

そう言おうとして、ハッとした。
それはリヴァイ自身が言われていた、自分には響かない言葉そのものだったからだ。
こいつは俺と同じように、残酷な現実を見つつも、強くあろうとしているのか。

そんなリヴァイの心中を理解したかのように、マヤは続けた。

「やっぱり兵長、優しいですね。
私、こんなに優しい人に会ったことありません。」

ストレートすぎる物言いに、リヴァイは言葉に詰まった。

「私、言いましたよね。
兵長の側にずっといたいって。
だから、必ず生きて帰ります。

兵長はきっと今回もご無事ですから、私も生きて帰らないと。
生きて帰って、またこうやって兵長とお話したいです。
この間は私が喋ってばっかりでしたから、今度は兵長のこと、たくさん教えてください。」

そういって、マヤは頬を染めながらリヴァイをまっすぐに見つめた。

何だ。この、押し倒したい状況は。

いや待て。
ここで押し倒してやることやっちまうと、こいつが壁外調査に行くことを認めるようなもの。
そう思ってリヴァイは自身を制した。
この間の夜といい、今日といい、つくづくタイミングが悪い。

リヴァイはあきらめて、マヤの頭をはたいた。

「頑固な奴だ。
何度でも説得してやる。」

そう言って、仕事に戻っていった。
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