進撃 第壱扉 [dream]
□お迎え
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病院に着くと、負傷した部分を点検し、薬を塗り包帯を巻きなおした。
投薬の内容も精査する。
治療のスケジュールより、回復のペースのほうが若干早いようだった。
「流石です兵士長さん。日頃身体を鍛えてらっしゃるから、回復が早いですね。」
マヤは看護師、いや医師としては本当に優秀だった。
判断や治療はいつも的確で素早い。
医師であるマヤの目は、はっきりとした意思を宿し、真直ぐ視線を注いでいた。
治療をしていない時とは比べ物にならない。
「リヴァイだ。」
「え?あ!そ、そうですね、名前!失礼しました!」
「どもるな。」
「が...んばります。」
治療が終わったところで、リヴァイは“医師でない”モードに入ったマヤへ、気になっていたことを聞いた。
「調査兵団に知り合いがいるのか。」
「えと、はい。同期が何名か。私、99期なんです。一応...あの日までは調査兵団志望でした。」
「そうか。あの日、現場へ出たのか。」
104期訓練兵がトロスト区の現場へ駆り出されたように、99期は最初の“あの日”にシガンシナ区の現地へ駆り出されたのだ。
完全に平和ボケしていた時期だっただけに、大勢の兵士が命を落とした。
マヤはその生き残りだったのだ。
「立体機動は得意だったんですが、ブレードが上手く使えなくて。討伐は一体も出来ていないです。でも逃げることは上手くできると分かったので、あの日は逃げ遅れた人を避難させてました。でも脚を喰われてジ・エンドです。情けなかったです。」
「脚?」
「ええ、義足なんです、こっち。何年も使っていると、見分けつかなくなりますね。」
そう言ってマヤは左の踵を叩いてみせた。乾いた音がする。
疑問に思っていたことが次々分かった。入口で話していた兵達は99期の同期、鍛錬された身体は訓練兵だったからだ。討伐はしていないというけれど、“あの日”に脚を失いながらも生き延びたということは、 かなりの能力の高さを物語っている。
しかしリヴァイは気に入らないことがあった。
「だからてめえはそんなに自分を貶してんのか、気持ち悪ぃ。」
リヴァイの歯に絹着せぬ物言いはいつものことである。
ジロりと睨みながらマヤに言い放った。