進撃 第壱扉 [dream]

□想い出
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その日は珍しく、マヤとエルヴィンの休みが合った日。
マヤの誕生日が近いこともあり、食事をしてホテルで過ごそうという約束をしていた。
レストランもホテルも、手配したのが大人であるエルヴィンだったので、高級なところだったらどうしようとマヤは心配していたが、着いたホテルはカジュアルで洗練された雰囲気の、こじんまりとしたところだった。宿泊客も、マヤほどではないが若いカップルもいて、皆上品な雰囲気だった。


「エルヴィン兵長、とってもすてきなホテルですね!」
「マヤに喜んでもらえて良かったよ。」


当時のマヤには分かりもしないが、エルヴィンのエスコートは完璧だった。エルヴィンはマヤの手を取り、ゆっくりと歩き、充分にまわりとの距離を取り、緊張しないよう優しい言葉をかけた。どの所作も自然で、嫌味がなかった。その程度のことは特に意識や努力なしに出来る男なのだ。


夕食はホテル併設のレストランで取った。ウォール・シーナに近いロケーションのため、内容はかなり豪華だった。二人はワインで乾杯し、魚料理を食べた。海のないこの世界では、川魚は肉と同じくらい貴重だ。マヤは魚を一度食べてみたいと思っていたし、食事の後にはデザートまでついていたので、歓喜した。
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