進撃 第壱扉 [dream]
□発散
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その日はリヴァイとマヤが二人で暮らし始めて初めてリヴァイが壁外調査から帰ってくる日だった。
マヤはリヴァイが帰ってくるのをとても楽しみにしていた。
リヴァイの仕事は分かっているし、前回の壁外調査はマヤも参加した。
しかし分かっているのと寂しいのはまた別物なのだ。
食事は何にしよう、掃除は行き届いているだろうか、傷心のリヴァイにどんな言葉をかければよいか。
そんなことに考えをめぐらせながらも、マヤは少しだけ落ち込んでいた。
夕方、玄関のドアが開いた。
「戻った。」
「お帰りなさい。」
制服は汚れてしまったのか、シャツにスーツっぽいパンツという格好だ。こういう格好をしているとリヴァイは、本当に年齢不詳である。実は自分とさほど歳が変わらないんじゃないかとさえマヤは錯覚した。
「どうだった?」
「いつもと同じだ。犠牲の割には、成果が出ない。」
「・・・大丈夫?」
「マヤよ、お前こそどうした。」
リヴァイはいち早くマヤの変化を見抜いた。
「担当してる患者さんが亡くなったの。難しいことは分かっていたんだけどね。」
「大丈夫か?」
「・・・いつものことだよ。」
無理やり微笑むと、マヤはキッチンに向かった。
夕食はオムレツにした。今朝取ってきたばかりの卵をフライパンに流しいれると、ふわりと良い匂いがした。心を和ませてくれるはずのその柔らかい匂いも、二人の傷心には届かない。夕食はカチャカチャと、食器の鳴る音がダイニングに響いていた。