進撃 第壱扉 [dream]

□生還者
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さっきから遠くで叫び声が聞こえる。
気のせいか、それはだんだん近づいているようだ。
運び込まれる怪我人も増えてゆく。

もしかしたら、ここで遭遇するかもしれない。

「衛生班は万が一に備え、立体機動装置を付けてください。」

班長の指示にマヤをはじめ班員は覚悟を決めた。

指示が終わるとすぐ、地響きが聞こえてきた。
どんどん大きくなる。

聞いていたより走るスピードが早い!

焦る間もなく奇行種と思われる巨人が姿を表した。
その後ろから、他の班の兵員が何名か巨人を馬で追うが、追い付く様子はない。
駄目だ、ぶつかる。

「討伐組、行け!他は怪我人を退避!」

マヤは巨人に向けてガスをふかせて飛び出した。

大丈夫、何年かぶりの立体機動はすぐに体に馴染んだ。
あとは、ブレードだ。

刃のきらめきが、恐怖心を引き出す。

でも。

(兵長。あなたが話を聞いてくれたから。)

いける。

巨人に対する恐怖心は、思った通り少なかった。

「討伐をお願いします!」

巨人の太腿にアンカーを刺して地面を蹴り、高く舞い上がる。
空から、巨人の後方の兵へ向かって叫び、奇行種の足をザックリ切断した。

巨人の倒れる衝撃を確認しながら、マヤは他の巨人を探す。
5体くらいはすぐに目に入る。
どれも8m級以上はありそうだ。

うなじは自信がない。

なのでマヤは手首や足の腱を狙っていった。

(兵長。これがあなたのいる世界。)

7m級を引きつけて、両手首を切り落とす。

(やっと分かりました。あなたの強さと優しさが。)

13m級の足の腱を削ぐ。

(だから、あなたのところへ帰ります。帰らなくちゃ。)

倒れたが起き上がろうとする10m級の背筋を刻み、腕を切り落とす。

(兵長。あなたと共にいたい。)

5m級はうなじを削ぐことができた。

(兵長。)

マヤの心の中はとても静かだったが、それとは別に身体を酷使して、巨人の筋肉を破壊していった。

「おいあんた!」

地上から誰かに呼ばれ、我に帰ったその瞬間、左足に激痛が走った。

この痛みには覚えがある。

食われた。
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