進撃 第壱扉 [dream]

□同期の兵
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「リヴァイ兵長、お怪我の具合はどうですか?」

訓練の休憩中、一人の兵がリヴァイに声を掛けてきた。
先日マヤと話していた、同期の男。確か名前はアンリといった。

「ああ、予定より早く治りそうだ。」
「それは何よりです!早くまた兵長の立体機動が見たいですよ。」

マヤから話を聞いて改めて確認してみると、99期は優秀な兵が多かった。巨人の恐怖に曝されたため入団数こそ少なかったものの、その多くは少数精鋭として今も活躍している。この男アンリも、少し調子が良いところがあるが、幾多の壁外調査を生還した貴重な人材である。
にこにことリヴァイの言葉を待つアンリに対して、リヴァイはいつものように話を切り上げず、マヤの話題を振ってみた。

「...あの医師は、お前の同期なんだってな、アンリ。」
「はい、医師というか何と言うか、その辺りは兵長もご存知だと思いますが。
訓練兵時代は優秀なやつで、立体機動であいつにかなうやつはちょっといないってくらいだったんです。あいつなら、今の脚でも飛べると思いますよ、冗談ではなく。」
「しかしブレードが苦手だと言っていたな。」

リヴァイと嬉しそうに談笑していたアンリが、何気なく言ったリヴァイの言葉に対して意外だという顔をした。

「...驚きました。兵長、マヤとそんな話も?同期の俺達も最近知ったんですが。」
「?」
「あ、いや、そうですね、あいつは確かに細腕だから削るのは浅いです。立体機動でたいていの巨人に追いつけるのに、勿体ないんです。」

こいつは正直なのはいいが、隠し事は苦手らしい。
先程の嬉しそうな表情は消え、気まずそうにリヴァイから目線をそらしている。
アンリが何かをはぐらかしたのは明らかだった。

「ブレードが苦手なのには何か訳があるのか?」
「...。」

しまったというようにアンリは黙ってしまう。
リヴァイがどうしたものかと思っていたとき、休憩が終わってしまった。
二人とも訓練に戻らなければいけない。
しかし実直なアンリは、信頼する上司であるリヴァイに、出来るだけの情報を残そうとした。

「...残酷な話です。具体的に俺からはちょっと。兵長、今度あいつに酒でも飲ましてやって下さい。俺らも酒の席で聞いたんです。病院でのマヤを見てると、驚かれるかもしれませんが...。」

そう言ってアンリは訓練に戻って行った。

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